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罪の天使たちのleylaのレビュー・感想・評価

罪の天使たち(1943年製作の映画)
3.9
『魂のゆくえ』の流れから『田舎司祭の日記』を再鑑賞するつもりが、思いがけず見つけました。

ブレッソン監督の長編デビュー作。

ほとんど修道院内の描写だけれど、修道服の女性たちが並ぶ端正な構図に引き込まれる。今作はプロの俳優を使用し、劇伴もあります。後のミニマムな作品とは違う分、ドラマとして観やすかった。

裕福で無垢なアンヌ=マリーが修道院に入所する。アンヌは刑務所に服役中のテレーズに興味を持ち、自分こそが彼女を救うのだと思い込み、しつこく入れ込んでいく。周囲はそれをよくは思わず孤立し、アンヌはトラブルを起こして修道院を追い出されることに…

↓以下、ネタバレ含みます






テレーズのためにしていることは、結局はアンヌ自身の救済のための偽善なのだが、アンヌだけが偽善なわけでなく、修道院にいる人たち皆が偽善に満ちている。女性の嫉妬や妬み、気に食わないものを排出しようとする意地悪さは、聖なる場所でも一般社会と同じでした。

裕福なアンヌと正反対のテレーズ。二人は境遇は違うけれど孤独という共通項があり、アンヌは心の結びつきが欲しかったのだと思う。裕福であってもアンヌは家には帰りたくなかった。だからテレーズに固執し、人助けの使命感に燃えることで自分を保とうとしたのかもしれない。

テレンスが改心するラストのシークエンスがよかった。自身の死を持ってテレーズの心を動かしたアンヌは、キリストのようにも思え、手のカットが十字架に見えた。救いのあるラストだった。美しい瞳を持つ女優さんでした。
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