賽の河原

ゆきゆきて、神軍の賽の河原のレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.0
もはや伝説的な作品として、タイトルは何度も何度も耳にしていた作品でしたけと、劇場で観る機会があったので観てきました。原一男監督のトーク付きの上映でしたけど、最高でしたね#最高
奥崎謙三さんっていう筋金入りのちょっとおかしな人に密着する話なんですけどね。アジア・太平洋戦争で従軍してた奥崎が所属していた隊の過去、終戦後のニューギニアで隊長が2人の兵士を「処刑」したって事件があったことを戦後36年経てから明らかにしようとするっていうドキュメントなんですけど。
まずもう一人の「ヤベーやつ」のドキュメントとして完全に面白いっていうかね。冒頭、結婚式のシーンから始まるんですけど、仲人をつとめる奥崎が唐突に自分が前科三犯で、天皇にパチンコを撃ったアナーキストですみたいな話を滔々と始めるんですよね。ヒロヒトこそが無責任の根源であり田中角栄を殺すぞ云々みたいなことが書かれた播磨屋トラックみたいな奥崎のクルマ、グランツーリスモのリバリーで配信してほしいすね。
んで、奥崎と処刑された遺族で、処刑を命じたとされる上官だとか、刑を執行したと思しき兵士の家を訪ねて回るわけですけど、やっぱり奥崎は完全におかしい人ですからもうね。笑い事じゃないけど笑いますよw 相手の事情も関係なく常識外れの時間に行ったりして煙たがられまくりながら死ぬほど強引に証言を引き出そうとする。なんなら相手に喋らせるためには暴力も辞さないっていうw
完全に常軌を逸した行動をしてる奥崎は勿論おかしいんですけど、素朴に見てあげると「戦争で完全におかしくなっちゃった人なのかな?」ってテイストもある。
でも普通に注意深く観ると、上映後原一男監督も言ってましたけど「カメラの前にいること」を意識して、演じてる部分もいるわけですよ。『ゆきゆきて神軍』というタイトルの通り、奥崎謙三にとっては日本や天皇の戦争責任は勿論それなりに重要なんだけれども、それ以上に自分がカメラに映っていること、もっと言うと自分の宗教的な思想とかその思想における自分の価値が大事なのが見えるという。
もはや観たのが夏休み最後の方と、相当昔なのでアレですけど、生半可なドキュメンタリーは本当に退屈に観えてくるくらいスリリングな傑作ですよ。
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