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椿三十郎のlarabeeのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.7
【ミフネかっけー!】

正義感強く、上層部の汚職を正そうと決起する若侍たち。だが相手は一枚も二枚も上手の重鎮たち。ひょんな事からそんな若侍たちと出会い、彼らの仲間に加わる浪人、椿三十郎。口は悪いが経験の乏しい若侍を的確に導いていく。

随分前に観て、それ以来黒澤明のマイベストとなった本作。

腐敗した藩の上層部と、椿を中心とした若侍たちとの策と策がぶつかる。激しい立ち回りも本作の魅力だが、相手の裏を描いたり罠を仕掛けたり、頭脳戦も見どころ。

そして何と言ってもミフネ演じる椿三十郎の強力なリーダーシップ。半信半疑でついていく若侍たちに、背中を見せ、実力を見せ、結果を出し、信頼を得ていく。何てかっこいいの。

ラストの椿(三船敏郎)と室戸(仲代達也)の決闘シーンは何度観ても痺れる。血しぶきも凄いがあの「間」。あんな「間」は怖くて誰にも撮れない。黒澤、三船、仲代の凄さの極み。

本当は邪道かもしれないが、サブスクの現代、あそこのシーンだけ何度も繰り返し繰り返し観る。邪道とわかっていてもかっけー!

あとはコミカルなシーンもいい感じで緊張の緩和になっている。母娘のシーンもいいし、特に小林桂樹のシーンなんて声に出して笑ってしまう。

策の掛け合いがストーリー展開を面白いモノにしており、かつ魅力的なキャラクターと演じる俳優、迫力ある殺陣のシーンコミカルなスパイス、どれをとっても素晴らしい出来栄えでこれをよく98分に纏めたな、と。レーダーチャートではめっちゃ面積が大きくなるパターン。

そして何と言っても苗字につけている「椿」の花。あんな憎い演出ある?ラストは鳥肌がモノ。

どの作品も見応えある黒澤作品の中で、いぶし銀の本作が一つ抜けて私はマイベストです。
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