空

彼岸花の空のレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.0
若い娘たちが封建的な父権に挑戦し、勝利を収め、和解する話。従来の家制度が徐々に弱体化し自由恋愛が台頭した変革期だからこそ生まれた作品であり、キャリアの初期から家族、ことに親子関係の描写に長けていた小津という作家の真骨頂が発揮されている。

佐分利信演じる頑迷な明治世代の父親(この役柄がいつもの笠智衆じゃないのは納得の人選)と、田中絹代演じる慈愛と芯の強さを兼ね備えた母親とのやり取りが実に絶妙。「ザ・おしゃべりな関西のおばちゃん」な浪花千栄子や、平凡なサラリーマンの悲哀をユーモラスに演じた高橋貞二など、コメディ的な要素もなかなかに笑える。
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