イチロヲ

エンジェルのイチロヲのレビュー・感想・評価

エンジェル(1983年製作の映画)
4.0
頭脳明晰な女子高生と世間ズレした売春婦の二面性をもつ少女が、暗闇を徘徊する殺人鬼に肉薄していく。夜の社会を知り尽くした少女の人生模様を描いている、サスペンス・スリラー。

主演女優のドナ・ウィルクスは製作年の時点で23歳だが、リカちゃん人形のような華奢な体つきをしているため、引きの絵では女子高生に見えなくもない(ちなみにヌードは登場せず)。一方、サスペンス劇は犯人が最初から明示されるパターンとなっている。

主人公の少女は、両親の愛情を得られないままで、現在の生活様式に「Let it go!(突き進むしかない!)」している。そして、学内で孤立主義を貫く代わりに、夜の街でハミ出し者たちと疑似ファミリーを作っている。

中年のドラァグ・クィーン、高齢の自称・西部劇スター、エキセントリックな女性画家など、疑似ファミリーのキャラ立ちが半端ない。主人公の境遇と殺人鬼の境遇を合わせ鏡のようにして、夜の街に潜む悲劇性を指し示していく論調もまた美しい。
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