Melko

デッドゾーンのMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

デッドゾーン(1983年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「現象が起きると、まるで自分が死んだような感じだ。」

「確かにデッドゾーンだ。自分が予見したことを、君は変えられる。」

大いなる力には、大いなる責任が伴う…
なんてアメコミの有名なセリフが頭をよぎる。

これは…なんというか、こんな切ない報われない主人公がいて良いんだろうか。。
よく頑張ったね、よく戦ったね、弱い気持ちによく負けなかったね…あなたは強い。来世はきっと、今世を見返すぐらい、幸せになろうね。。
って、ポエムみたいな言葉が浮かんじゃうほど、やるせないわ、この主人公ジョニー。。
そもそも「待つほどいい」っていうジョニー自身の言葉から始まっちゃった、彼の不幸な物語。この序盤はすごいホワホワした頼りないナヨナヨ青年だったのが、中盤〜ラストは眼光がずっと鋭い。恐怖で慄きつつも、それを受け入れ付き合い、更には大きな決意と共にまさに命懸けの使命に臨む終盤。

そういえば、事故に遭う前から頭痛がしていたジョニー。能力の覚醒に自己からの昏睡が関係あったのかなかったのかは分からないが、その能力を背負って生まれたらしい。

空白の5年、何よりも愛していた彼女は、自分の元を去り他の男と結婚し、子供まで生まれていた。変わってしまった辛すぎる現実
と同時に手に入れた、大きな異変が起きる前の人物と触れ合うと、その人間の運命が分かってしまう能力。
人智を超えた能力ゆえ、周りからは白い目で見られる。ジョニー自身も、そんな能力自分の手には負えない、と自分からは決して積極的に力を使わないのに、周りの人間がそれを許さない。

多くのレビューと同じように私も、ジョニーを捨てたサラの虫が良すぎる言動と態度には、はらわた煮え繰り返る。しかし、ジョニーに会う度弾ける笑顔の彼女を見ていると、やはり彼女にとってジョニーは特別な存在だったことは分かった。息を吹き返すか分からない彼を前に、おそらく苦渋の想いで決断した決別、帰って来た彼を前に揺れ動く気持ち(いや、そもそもお前が選んだ人生なんだから、揺れ動くなよって感じだけど)
撃たれて死にゆくジョニー、誰も駆け寄らず1人横たわる彼に、ただ1人かけ寄り、抱き抱えるサラ。側から見ればサイコなテロリストでしかないジョニーへのあの態度は、そういうことなのかな、と思ったり。
いやまあ、ていうか、中途半端にジョニーを誘ってんじゃないよ!だけどね!「(私の身体を)待ちすぎたんじゃない?」じゃねぇわ!そのあと会おうとしたら拒絶されて悲しむジョニーをご覧よ!

でもそんなサラよりムカついたのは、ジョニーが家庭教師をすることになった少年の父親。ジョニー「外に出るのは嫌だ」っつってんだろ!家庭教師頼みたかったら、お前が息子を引っ張ってでも連れてこい!こいつが二枚舌かつ誰のことも信用してない感があって、ずーっとイライラ。まぁその結果、他所の子供を2人も死なせた。自業自得なり。

触れた人間に迫る危険を知らせたいジョニー、でも当然みんな気味悪がる。そんなジョニーは「家が燃えてる!」「氷が割れる!」など声を荒げて主張する。物静かで地味なジョニーは、そこまで何かを強く主張することはできない人間だったハズだ。
大いなる力がそうさせたのか。

最後の最後まで思いっきり笑えなかったジョニー、救いのない展開と結末や、ジョニーの力を使った幻視は誰の視点なのか分からないのがモヤっとしたり、納得いかない点はいくつもあるけど、その切ない表情をさまざまなバリエーションで見せたクリストファー・ウォーケンの繊細な表情の演技だけが楽しめたポイントだった。
あ、あとOPで画面が少しずつ”DEAD ZONE”の文字にくり抜かれていくのはちょっと面白かった。

ふと、ちょっと真面目に考えたのは、世界で時々現れる目的不明(一見、撃たれる側に何の非もないように見える)のテロリスト達は、みなデッドゾーンが見えているのでは…と。逮捕されても、デッドゾーンが見えるなんて言ってもどうせ信じてもらえないから、真偽のわからないテキトーなことを言うのでは…なんて。。
Melko

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