Aimi

アヒルと鴨のコインロッカーのAimiのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

蓋を開けると、とても悲しい物語が待っています。

不思議なタイトル
突飛で奇妙な川崎の言動
広辞林
川崎と玲子の異なる意見
忽然と消えた教科書

これらのことに椎名と一緒に頭を捻ったり、2人のやり取りに笑ったり。
冒頭こそ楽しいですが、トリックが明らかになり、前述のたくさんの謎の意味が次々と明らかになり、ドルジの物語を追っていくうちに、彼の感情が私達の胸に突き刺さってきます。


原作を読まずに観た方はきっとあのトリックに驚かされるし、原作を読んでから観た方は、彼らの物語の奥まで知り、文字でもって感情移入している分、この作品を観ての感情移入の度合いが深くなるのではないでしょうか。私がそうでした。
映像化したことで、物語がすっきりとまとまり(このまとめ方は素晴らしいです)、文字だけだった登場人物たちが動き、彼らの表情や声音で感情があらわになるからです。


声に出さなくても聞こえるドルジの怒りや悲しみの叫び・感情が、突き刺さります。
生まれ変わりを信じ、死を恐れないはずのブータン人が「死」に泣き叫び、
人を葬る手段だったはずの鳥葬で復讐を果たそうとする。

孤独な中で出逢った恋人と友人。
ドルジにとって琴美と川崎は、2人との出逢いや日々は、これほどまでにかけがえのないものだったんです。


バス停や大学の入学式で疎遠される外国人。
警察にも疎外されるドルジ。
ペット殺しの若者たちへの恐怖感。
再び孤独になり、ブランコをこぐドルジ。
川崎のジャケットを羽織る姿。
孤独を抱える中で聞こえた、椎名の「風に吹かれて」←特にここの瑛太くんの表情は秀逸です。
椎名を見送る駅のホームでのドルジの表情。
タイトルやキャッチコピーに秘められた気持ち。


たくさんの、たくさんのこと。


観終わった後
物語を振り返ると、涙がこぼれます。

アヒルの声が、聞こえますか?
Aimi

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