emily

愛の残像のemilyのレビュー・感想・評価

愛の残像(2008年製作の映画)
3.8
写真家のフランソワと、既婚の女優は写真撮影で出会いたちまち二人は惹かれ合う。しかし二人の関係は長く続かず、一年後新しい恋人と幸せな日々を過ごしていたが、居ないはずのキャロルの姿が見えるようになり。。

モノクロの色彩と多用するクローズアップと意味深なフェイドアウトに心情が溶け込む。抽象的なものの哲学的な考えが随所に挿入され、シンプルなストーリーに深みをもたらす。冒頭はハイトーンに二人とも白いシャツ、みずみずしく目線が交差したちまち二人は恋に落ちる。カメラマンと女優という見る、見られる立場を絶妙に操るカメラワークにより主人公に寄り添いやすくなる。キリキリと胸に痛みを与えるバイオリンの音色が抜けることのできない二人の関係を不気味に彩り、モノクロの映像に影が色濃く映り出す。

無論スタイリッシュなカットで見せる街並み、ルイ・ガレルの魅力を十分にひきだしながらも注目は魔性のような魅力を常に纏うローラ・スメットだ。表情の変化や絶妙な空気感が色彩に心地よいスパイスを与えながらそれに感染させられていく。それは出会った瞬間から既に少しずつ溢れていたように思える。

新しい恋人と"幸せな日々"を演じるも二人の間には見えない溝があり、向き合ってない過去と罪悪感に蝕まれていく。幻想と現実の狭間、目を背けてきた自分の本心と向き合うことになるのだ。それは無意識の中にずっと眠ってきたもので敢えて見ないようにしてきたもの。自分自身がその答えを痛いほどわかっているから苦しむのだろう。シンプルな幕引きもエスプリが効いていていい。死は感情を存在を永遠のものにする魔法がある。
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