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わが命つきるとものTSのレビュー・感想・評価

わが命つきるとも(1966年製作の映画)
3.3
【トマス・モアの苦悩】73点
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監督:フレッド・ジンネマン
製作国:イギリス
ジャンル:歴史
収録時間:120分
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第39回(1967)アカデミー賞作品賞受賞。
正直なところ、世界史をそれなりに好きな自分でも少々退屈と感じてしまいました。しかし、もちろん悪い作品とは思いませんし、こういう史実に忠実な作品はこれからも作られるべきであると思います。今作のお陰で、世界史の教科書に単なる太字で掲載されていたトマス・モアのイメージが出来るようになりましたので。

イギリスのテューダー朝。テューダー朝のヘンリー8世は中々男を産まないキャサリンに苛立ちを募らせ、逆に女官のアン・ブーリンに好意をもったため、キャサリンと離婚をしようとする。しかし、カトリックにおいては離婚は不可能であるため、ローマ法王を説得しようとするのだが。。

イングランド王国はノルマン朝、プランタジネット朝、そして百年戦争を経てテューダー朝になります。ちなみに『ブレイブハート』はプランタジネット朝期の物語です。さて、そのテューダー朝の王家の問題で有名なのがこの離婚問題であり、世界史の教科書などにおいては、1534年の国王至上法によりイングランド国教会をつくり、カトリックから離反するものとされています。考えてみれば、国王一人の離婚のために国そのものが宗教を変えるなんてとんでもない話です。これに最後まで抵抗していたのが、本作の主人公ともいえるトマス・モアです。彼は『ユートピア』を著したことで有名であり、人望もある熱心なカトリック教徒でした。しかし、最後まで傲慢なヘンリー8世に反発したため悲しい最期を遂げるのです。

今作は、そのトマス・モアの苦悩を描いた作品です。最後の法廷の場面を除き、全編がほぼそれなので、映画的にはやや退屈してしまうでしょう。はっきり言ってしまうと地味な作品です。しかし、このような権力者の悪事を許さないためにも、反抗勢力の思想をしっかり描くのは重要なことです。アカデミー賞は時代を映す鏡とも言われますが、本作がアカデミー賞を6部門も受賞できた理由は、1960年代にあるのかもしれませんね。また、衣装や世界観も忠実に再現されているようです。どうしても中世ヨーロッパというのは暗いイメージがあるので、本作にもそのような節がありますが、それは覚悟の上で見なければならないでしょうね。(なお、本作の時代を中世ヨーロッパと称すのは妥当かどうか、微妙なところです)
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