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海の上のピアニストのYYamadaのレビュー・感想・評価

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
3.9
名作コンビ【トルナトーレとモリコーネ】

〈見処〉
①モリコーネの音楽美による戯曲
・トルナトーレ監督と映画作曲家モリコーネの「中期」活動作品。
・英題『The Legend of 1900』は、豪華客船ヴァージニアン号の中で生まれ、生涯船を降りることのなかったピアニスト「1900 (ナインティーン・ハンドレッド)」と呼ばれた男の物語を差す。
・戯曲『ノヴェチェント』を脚色した作品であるが、本作の見処は「1900」が紡ぐ、現代最高の映画作曲家エンリオ・モリコーネの美しい音色にある。

②トルナトーレ、映像でロマンを語る
・本作の舞台は1927年から第二次対戦直後まで。生涯一度も下船しなかった天才ピアニスト「1900」とトランペット演奏家マックスの二人の友情を通じてストーリーは進展。
・有名なタイタニック号と同時期に運航していたヴァージニアン号。冒頭、船の前に自由の女神が現れ乗客の移民たちが「アメリカ!」と叫ぶシーンなど、船旅にロマンを感じる時代背景にある。
・本作のキーアイテムである「一枚のレコー」に秘められた、天才ピアニストのたった一度の恋についても、トルナトーレ監督はロマンチックに演出する。
・「1900」がふと船窓越しに見かけた美しい少女。彼の目に映る少女への感情が、指先の鍵盤を通じて、優しく美しいメロディとなっていく。『ニュー・シネマ・パラダイス』の「アブラカタブラ」に匹敵する美しいシーンとなっている。

③なぜ下船しないのか?
・このまま乗船していても生きていけない環境にあながら、親友マックスの説得に応じない「1900」。
・下船しない理由は作中で語れていないが「陸地にて生きる術がない不安感」と「
母なるヴァージニアン号に対する思い」にあるからだろうか。
・マックスが船が爆破される瞬間を見つめる描写は『ニューシネマパラダイス』の映画館同様に切ない。
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