優しいアロエ

冷たい水の優しいアロエのレビュー・感想・評価

冷たい水(1994年製作の映画)
4.0
〈凍れる世界が終焉を物語る一抹の逃走〉

 1972年、フランス。五月革命の狂熱がとうに冷めきったパリ郊外で、やり場のない閉塞感が若者を幻想へと駆り立てた。

 本作は、フランスのTV局アルテの企画に端を発する。アンドレ・テシネ、クレール・ドゥニら数世代の作家が自身のティーンズを短期間・低予算で映像化するというもので、オリヴィエ・アサイヤスがそこで製作した45分のTV版を長編映画版へと膨らませたのがこの『冷たい水』となる。ゆえに万引きや両親との軋轢、ドラッグ、家出といったモチーフは、アサイヤス自身の経験が投影されている。

 若者たちは、ドラッグと大音量のミュージックに身を沈め、炎を囲んで踊り耽る。まるで心に秘めた閉塞感や倦怠を無理やり打ち消そうとするかのようだ。カメラはそんな彼らの表情に窮屈に詰め寄り、次々と映し替えていく。彼らの抱える息苦しさが群像的に伝わってくる演出だ。蒸したパイプをバトン代わりに魅せるシーンが素晴らしい。

 そんななか、主人公ジルとクリスティーヌは現実から抜け出す決意をする。燃えさかる炎とは対照的に、彼らを待ち構えるのは凍えるような空気と冷たい水であり、早くも旅の終焉を予感させる。いや、二人も初めからこうなることは分かっていたのかもしれない。
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 ヴィルジニー・ルトワイヤンは横顔がナタリー・ポートマンに似ているね。
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