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アフリカの女王のotomisanのレビュー・感想・評価

アフリカの女王(1951年製作の映画)
4.0
 WW1下のアフリカ中東部、内水域で最大の脅威は排水量100トン、6ポンド砲を搭載したドイツ帝国砲艦。兄の死期を早めた怨敵ドイツへの報復にこれ以上の獲物はあるまい、と女提督ローズが日和見なボギー船長の尻を叩く。この女丈夫っぷりが現実主義な器用人をして恐れ入らせる辺りが面白い。
 なにしろ、ワニはいる、カバも蛭も蚊の群れもいる、ついでにドイツ軍もいる川筋を滝下りまでして突っ切って英領ケニアを目指すのだからベテランの船長は愛想をつかすが当然だが、世界征服の最先鋒イギリスが怯んでなんで女王の面目が立とう。
 この勢いが鼻息だけに留まらず、提督を発明家たらしめるのも対独抗戦の意志に加え、何でも屋船長を擁すればこそで、ありあわせで水雷2発を装備して自爆艇「アフリカの女王」を指揮する。なんともイギリスの縮図は男女2名で事足りるというわけである。この艇を砲艦にぶっつければイギリスの制海権は盤石だ。
 この景気のいい物語は1951年の制作で翌年には新女王が即位する運びである。王位継承は事前に議論の進んでいた事であろうから、この大冒険も新女王の露払いというべきであろうか。ちなみに戦果は予定外な二人の結婚と予定通りの砲艦撃沈に至るが、それはかの夫婦の特攻ではなく、砲艦側の前方不注意による敵失での恵みとあって、この偶然の引き合わせは神のみぞ知るところだろう。だが、イギリス人なら喜んで"God save the Queen"と唱えるに違いない。
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