マヒロ

吸血鬼のマヒロのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1932年製作の映画)
3.0
(2024.16)
超常現象について研究している青年アラン・グレイは、ある田舎の村に辿り着いてから説明のつかない奇妙な現象に遭遇するようになる。実はその村には古くから吸血鬼の伝説が残っており、アランは村の領主の一家と共にその脅威に曝されることになる……というお話。

タイトル通り吸血鬼についての話だが、いかにも吸血鬼といった感じの要素……例えば良くイメージされる貴族のような装いとか人の血を吸う場面とか、そういったものはほとんど無く、人間の暮らしの中に溶け込み淡々と獲物を狙うような存在として描かれている。
また、現実か幻想か分からないような演出が続くのも特徴で、そもそも主人公のアランが「現実と空想の区別がつかなくなっている」と最初に説明されるので視点として信用出来ないところがあり、それでいて登場人物が明らかに統合性の取れていない行動を起こしていたりと、今目の前に見えているものが真実かどうかすら分からないような幽玄的な空気が漂っている。ザラザラのフィルムの質感も相まって、白昼夢みたいな奇妙な世界に放り込まれた気分になった。
独立して動く影や魂が身体から抜け出る描写など、映像的にも遊び心があって面白い。一番印象的でメインヴィジュアルにも使われがちな巨大な鎌を持った人影のシーンが、ただの漁村のお爺さんの仕事風景だったのには驚き。

話自体は結構分かりやすくて、悪い吸血鬼一味とそれに対抗する主人公達という単純明快な構造。ただ、それ故に細かい部分が気になってしまうところもあり、例えば終盤吸血鬼退治で大活躍するのが領主の屋敷の使用人?のお爺さんで、主人公のアランはその間ボンヤリと幻覚を見ていたりして何もしていない時間の方が長かったりと、何だかよく分からない存在になっているところとか。取り止めのない演出が多いが故に、話運びでもケムに巻くような感じで分からん状態にしてくれた方が個人的には良かったかなと思った。
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