Kamiyo

用心棒のKamiyoのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
5.0
用心棒(1961) 監督 黒澤明
脚本 菊島隆三 黒澤明

もう 何回も観ている作品。
これは、やっぱり面白い。とにかく面白い。
最高の痛快娯楽時代劇。
冒頭から、「枝を投げて、道行く方向を決める用心棒」、
「名前は、桑畑三十郎、もうそろそろ四十郎だがな」というのは、「椿三十郎」と同じ台詞です。
自由奔放な用心棒(三船敏郎)が魅力的。。。。。
しかも、強い。。続編的作品の「椿三十郎」につながる

9割はこの作品によってもたらされたものではないでしょうか。今世界で抱かれている三船敏郎さんの侍というイメージは
桑畑三十郎が、たまたま通りすがった宿場、そこには二組のヤクザが派を争っています。
この作品は、三十郎がこのヤクザをけしかけ喧嘩させ、双方とも潰してしまおうと画策し活躍する。
「七人の侍」などとは違い、孤軍奮闘する三十郎の際立ったキャラクターと、それを演じた三船敏郎の演技は凄いものがあります。
印象的な音楽をバックに背中姿で現れるタイトルバックから3人のヤクザを斬って「桶屋、棺桶2つ!いや、多分3つだ!!」、
仲代達也さん扮する卯之助と知恵比べをしたり、司葉子さん扮するかわいそうな家族3人を助けたり、そのせいで袋叩きにされたり、
最後はピストル対刀の対決に勝利し、「アバよ!」と去っていくラストまで、映画の面白さが満喫できるアッという間の1時間50分‼️ホント黒澤明監督は天才‼️

黒澤監督は後年『用心棒』について、「この作品の最大の魅力は殺陣のシーンではなく、桑畑三十郎の特異なキャラクター設定にある」と言っています。
「三十郎という男が面白いという点が肝心なんですよ」と語っているそうだ。分かれ道で木の枝を投げて行き先を決める三十郎、悪党同士を闘わせて自分は物見やぐらから見物する三十郎(この場面の町を俯瞰するショットが印象的)。

三十郎は、親しみと可笑しみを持つ、野性的で圧倒的に強い侍です。
百姓の妻役司葉子さん見て「ああいう奴は好かねえ、ヘドが出そうだ」と言いつつも、自分の有り金を全て出し助けてやるところや、敵に塩を送ったりするところなど、所々に優しい一面も見せます。

また、刀を奪われ、料理包丁を持って「刺身にしてやる!」と勇んだり、敵に対し「脳足りん!」などと、子供っぽい台詞を言い放つところは、人間味溢れる可笑しさも備えています。
後の作品に続いていく、強さと親しみを持つ怪傑風雲的ヒーローの原形を、この作品で見ることができます。

また、『用心棒』に出てくる、魅力的な悪役(仲代達矢)、計算高い悪女(山田五十鈴)、頑固だけど何くれと主人公を助けるお爺さん(東野英治郎)、そして画面の手前に映る吊るされた人の足。これらも、三十郎のキャラクターとともに、後出のマカロニ・ウェスタンに多大な影響を与えた。

何と言っても三船の剣アクションがすばらしい。女房ぬい母子を救い出すため、見張りの6人をあっという間に倒すシーン。
その後その部屋を相手側一味の仕業と見せかけるため、部屋を荒らしまくるシーンの一連のアクションはほれぼれするほどの見事さ。
刀を振り下ろす、結んでいた縄が切れ、竹がばらばらと天井から落ちてくるシーン、
また天井のむしろ俵を刀で突き刺しザーッと穀物が零れ落ちるシーンなど、これらは天才的な黒沢の演出と三船の肉体が融合してうっとりしてしまうショットの連続だ。

公開当時に人を斬った時の音のリアルさが、それまで見慣れた東映時代劇のきれいな殺陣とあまりに違い過ぎる事が話題になった事も印象に残る。

ちなみに「七人の侍」が「荒野の七人」、「用心棒」が「荒野の用心棒」、「隠し砦の三悪人」が「スターウォーズ」になったと言われています。
「スターウォーズ」に関しては全てがそうだとは言えませんが、
黒澤作品の影響なくしてC-3POとR2-D2、ライトセーバー、ダースベイダーのデザインは無かったのではないでしょうか?
そしてこれらの作品でブレイクしたスティーヴ・マックイーン、クリント・イーストウッド、ハリソン・フォードらの名優たちもひょっとしたら映画界に現れ‼️
なかったかも。そしてスピルバーグ監督やルーカス監督に与えた影響を考え、彼らの「ジョーズ」や「スターウォーズ」で
今現在のハリウッドのサマームービー興行が始まった事を考えたら、今世界の映画界、映画人、映画ファンが黒澤明監督に感謝すべきなのです
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