スワヒリ亭こゆう

エル・スールのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
3.1
ビクトル・エリセ監督の二作目の作品です。
『ミツバチのささやき』と同時に公開されていたので本作も続けて観賞しました。
スペインのフランコ独裁政権が終わり民主化の流れが出てきた中で公開された本作。
『ミツバチのささやき』の様に検閲下にあった作品とは違いますが、映画の中では独裁政権下のスペイン北部の町が舞台になっていて、現在のスペインのイメージとはまるで違い、薄曇りの中で映画は撮られています。フランコ独裁政権に対する監督の鬱憤が晴れていない、いや晴れる事はないんでしょう。そういう監督の思いが伝わってきます。
主人公は今回も一作目同様、少女が主人公です。
『ミツバチのささやき』のアナよりもっと年上でしっかりした印象の主人公エストレーリャ。
幼少期とティーンになったエストレーリャの顔がそっくりで成長するまで待ったのかなって思いました。違う女優さんなんですって!2人ともフェルナンド・トーレス似の美人な顔が瓜二つです。

タイトルの『エル・スール』は南を意味するみたいです。映画の舞台の北部は監督の故郷バスク地方の事かもしれませんね。主人公の父親はバスク帽を被っていましたし。
で、南は僕はバスク地方から見て南という意味かなって思います。つまりは首都マドリードかなって勝手に思ってます。スペインはバスクやカタルーニャなど多民族国家であり、内戦の悲しい過去と独裁政権の悲しい過去がある国。現在では太陽の様な明るいイメージの強い国なのでギャップがかなり大きいです。
話を映画に戻して、主人公の父は南の出身にも関わらず、父親と仲違いして北部にやってきた事が作中で語られています。
この辺りは監督から見たマドリードなど違う地域への想いの片鱗を覗かせています。

本作ははっきり言って急に終わった感じがします。
95分の映画ですが本当はもっと長かったらしいです。プロデューサーが長すぎると言って半分くらいカットになったとか。
映画も中途半端な印象を受けましたし、95分の映画の割にダラダラしたテンポを持ちます。
結構、退屈な映画でしたよ。『ミツバチのささやき』よりはストーリー仕立てになっているので観れますが、退屈でした。

随所に見せる美しい映像が目を惹く作品ですけど、やっぱり『瞳をとじて』が僕には合ってるのかな🤔