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下妻物語のaのネタバレレビュー・内容・結末

下妻物語(2004年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

・本作は、嶽本野ばらの小説の初巻である『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』(2002)を原作として映画化されたものである。当初はシャンテ シネ(TOHOシネマズシャンテ)を中心に40館程度の公開を予定していたのが、その後156館にまで拡大し、話題作となった。

・英題は『Kamikaze Girls』。本作は海外ウケもよく、ロサンゼルス映画祭、ニューヨーク・アジア映画祭、他5つの国際映画祭での上映が話題を呼び、最終的には2006年のカンヌ国際映画祭内でのコンペにてグランプリを獲得。フランスでは100館規模となる上映が決定した。ロリータ・ファッションで来館した者には割引特典があったらしい。フランス映画と2000年代の邦画は文法がかなり近しいものがあり、本作はフランスで大ウケというのは納得。

・監督はあの(?)中島哲也である。『嫌われ松子の一生』(2006)、『告白』(2010)、『渇き』(2014)、『来る。』(2018)等々、邦画においてはかなり著名な監督の一人だ。彼が邦画界において与えた影響すら一定度あるのだが、本作はすでに、彼のエッセンスがそのまま詰まっている。

・彼は1987年に映像業界に飛び込んでからは、主に80~90年代TVコマーシャル業界を牽引してきた。特に1997年の稲垣吾郎主演「写ルンです」のCMは非常に有名なものであり、CM界の巨匠と呼ばれるようになった。彼のこの出自は非常に重要であり、実際彼の映像は、文字通り漏れなくコマーシャルのレベルに派手な映像の数々が繰り出される。個別の表現についてはネタバレ抜きで話すが、本作はその系譜としては『来る。』を越すものがあり、凄まじい数の表現が詰まっているが、これはこの頃のハリウッドの潮流とはかなり対照的とも言えるだろう。

・思うに、彼は派手な映像を作ることに関して天才級の才能がある。『来る。』の呪術や殺人の圧力の高さは言わずもがな、『渇き』は全編にそれを煮詰めたような映画だし、実は『告白』でさえ、映像的なトーンこそ単調であるものの、展開はコマーシャル達をそのまま繋げてぶち込んだような圧倒的な怒涛さがあり、常に観客を飽きさせない。『下妻物語』は、原作からして嶽本野ばらのド派手な文字の使い方をしているような小説と、彼のブラッシュアップの才能が合わさり、主にファッション面では常に激アツ状態が続いていた。

・また、原作者である嶽本野ばら自身も、はっきり言って、本作をそのまま自でいくような人物である。デビュー当時、誕生年は1745年(ロココ朝全盛期)であると自称していた。代表作は、本作の他に、『エミリー』(2003)と『ロリヰタ。』(2004)が三島由紀夫賞候補となっている。もう読んでいると言葉のアクセルが1ページ目からラストまで全開で、また単語から世界の構築まで全てがサブカルチャーに傾倒しているのも含め、とんでもない人物だとつくづく思う。ちなみに、彼の『ハピネス』(2023)は今年映画化である。

・ここで使われる衣装のほとんどは、(靴を除いて)『BABY, THE STARS SHINE BRIGHT』が監修している。こちらも公式サイトを閲覧したところ、本作のルビ(調の何か)にあった装飾をそのまま拡大した世界観があり、とにかくコンセプトの圧力に圧倒される。比較的手に入れやすい価格でもあり、これは本作のファッション要素含めてカルトムービーとなるのも頷けるような徹底さがあるようにも思った。

・総評&感想。個々の表現をひたすらに詰め込んだという、中島監督の真骨頂であるコマーシャル表現そのもののような映画であり、ここまで派手さに富んだ映画は早々見かけません!これを観て退屈だ、暇だという観客は誰一人としていないはずですでしょう。それだけなら過激映像の羅列に過ぎないのですが(正直、中島監督作品は特定の部分において、刺激や興奮の羅列にしか脳内で変換し得ない部分があり、それが彼の本質が空虚であるという事実を剥き出しにしてしまっている、という先入観は持っていたのですが)、加えて本作は、嶽本野ばらの小説が持っている強烈な引力により、映像にはっきりとした方向性が生まれている、そのようにも感じる一本でした(何よりこのような映像効果による服飾の魅せ方は、ファッション業界的には大正解なのではないでしょうか?)。ネタバレ抜きは後々更新しますが、中島監督の中では一番好きな一本となりました。おすすめです!
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