たく

ジャン・ルノワールの小間使の日記のたくのレビュー・感想・評価

3.6
上昇志向の高い小間使いが幸せを手にしようと奔走する姿を描くジャン・ルノワール監督1946年作品。同じくミルボーの原作小説を映画化したルイス・ブニュエルの作品(1964年)は、もっと冷めた目で人間の愚かさを見つめるような怖い視線があったように記憶してる。例えば少女の死体の足をカタツムリが這うシーンとか。ポーレット・ゴダードがチャップリンと別れて再婚(相手はモージェ大尉役のバージェス・メレディス)した後の出演で、意欲溢れる前半と恋に苦しむ後半を見事に演じ分けてた。

容姿端麗な外見を買われて富豪の小間使いとして雇われたセレスティーヌは、いつか大金を手にして豪華な暮らしをするという野望を抱いており、その気持ちを日々日記に綴ってる。彼女が小間使いの面接で、容姿が優れないため不採用になりかけたルイーズを無理やり採用させるところに、さっそく彼女の自己主張の強さが窺われる。そんな彼女が隣に住む爺さんに付け回されたり、病弱な富豪の息子のお世話係になったり、気味の悪い同僚のジョゼフから求婚されたりと様々な人間模様が展開していく。

勝気だったセレスティーヌが富豪の息子と恋仲になったかと思えば、天邪鬼な彼から別れを切り出され、独り立ちを目指すジョゼフに半ば強引に連れ出されそうになる後半がだんだん怖くなってくる。ジョゼフは欲に目がくらんだ人間の末路を象徴するような描かれ方だった。このジョゼフを演じたフランシス・レデラーの不気味な目つきが凄かったね。
たく

たく