もめん豆腐

わが母の記のもめん豆腐のレビュー・感想・評価

わが母の記(2011年製作の映画)
4.6
主軸は作家で長男の洪作とその母八重。洪作は長い年月をかけて母から捨てられた子供だという念が人生に纏わりついて離れない今でいうアダルトチルドレン。そんな息子の気持ちを知ってか知らずか飄々とした母。そんな母子とその家族親族の話。井上靖先生の私小説とのことだが、実際の家族構成とこの話とは事実は異なる様子。この家族・親族・周囲の人たちの全役者が素晴らしかった!当て書きか?と思うほど、役者が役をしっかり演じきっていて集中して観られる。その中でも妹役のお二人のキムラ緑子さんと南果歩さんが生き生きしていたように感じられた。昔のバスが登場したり、美しいわさび田が出てきたり、鄙びた橋と紅葉が映えていた。再現が難しかったのか道路はアスファルトで舗装されていたけれど、さすがは伊豆沼津の地元全面協力下で撮影されただけあって、圧倒的な背景の力も感じられた。
個人的に特に素晴らしいと感じたのが、ラストの先生が妹にかける言葉。あの言葉に泣かされる人は多いと思う。老人介護を自分事として動いてきた人だからこその言葉。話している相手にとって、第一声で相手の本心が出てると思うから、こんな言葉をかけられたらいつまでも心に残るはず。妹たちがお兄さんを慕う気持ちがよくわかるの。
J:COMありがとう、いい映画だった。これで2回目。日曜夜21時のこの映画の時間は掘り出し物が多い。それと原田眞人監督の演者とスタッフへの感謝の気持ちがオープニングとエンドロールに込められていて、とてもとても感慨深い。一人ひとりの氏名がしっかり確認出来るスピード。監督の人間味がわかる。
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