ChernoAlpha

異人たちとの夏のChernoAlphaのネタバレレビュー・内容・結末

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

ケイのホラー要素は果たして必要だろうか。
……と鑑賞後にしばらく考えていたが、内容をじっくり思い返せば、ストーリーのピースとしてはやはり必要だったのではないかと思った。

ケイ(名取祐子)は冒頭の“シャンパンの夜”に命を絶っている。強い思いや恨みを残してこの世を去ったケイの一件が、おそらく「冥界のトビラ」(?)のようなものを開けてしまう「きっかけ」となったに違いない。そして、それがこの物語の全ての始まりだ。

翌日に英雄はゴーストステーションの見学に行くが、壁を越えて反対側の線路に出たところで同行者とはぐれてしまう。都会の地下を並んで走る2本の線路は「この世」と「あの世」。その狭間に英雄は迷い込み、両親と出会うことになる。

ひょんなことで息子と再会できるようになった両親は、生きている間に与え切れなかった愛情をこれでもかと息子・英雄に注ぐ。「お前は自慢の息子だよ」「大事に思ってるよ」。

ただ、そんな両親も幸せな時間がいつまで続くかは実は分かってはいない。英雄が家族や人の愛に目覚めたことがきっかけなのか、終わりの時が見えてくる。最後の晩餐となったすき焼きのシーンでは「ダメらしいや。もうちょっと間があると思ってたんだが」と父親(片岡鶴太郎)がぼやいて消える。

ケイが「もう両親に会いに行ってはいけない」と英雄に言うのは、英雄の愛や命を全て吸い取り、自分のものにして恨みを晴らしたかったからだ。英雄がみるみる衰えて行くのは両親と会っているからではなく、ケイが生気を吸い取っているため。最終的に、自身が命を絶ったマンション3階の部屋に英雄を連れ込み、怨念を晴らそうとしたのがラストシーン。


つまりケイの死がなければ冥界のトビラ(?)も開かず、両親と出会うこともなかった!“ひょんなことから、昔の両親と会いました!”なんて映画にならないからなぁ……と思ったけど、そう言えば『青天の霹靂』(2014)は“ひょんなことから”に近いなぁ。あれ?じゃあケイのホラー要素、必要ない?? 90年前後はオカルトホラーブームもあったから、その味付け要素?? うーん、わからなくなってきた😢


その他メモ
・再会した両親がやたら服を脱がせるのはなんでだろ笑 「よお!来たか!何やってんだ、服脱げよ」みたいな。冷房のない真夏の演出なんだろうけど、ちょっと笑った。

・母親(秋吉久美子)のラジコン趣味は何だったんだろう。謎だ。

・やたら豪華な脇役陣。ベンガルとか笹野高史とか。
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