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国境は燃えているのHKのレビュー・感想・評価

国境は燃えている(1965年製作の映画)
3.7
第二次大戦中に独伊に占領されたギリシャが舞台の異色戦争ロードムービー。
1965年のモスクワ映画祭で特別金賞を受賞したイタリア映画です。
イタリア軍中尉マルチーノは12名の従軍慰安婦を各地の部隊にトラックで送り届ける任務を命じられます。

占領下で飢えに苦しみ慰安婦に志願するしかないギリシャの女たちと、その護送任務に就くイタリア軍中尉たちとの道中での微妙な感情の移り変わりが描かれます。
初めは比較的気楽に思えたトラックの旅も、ギリシャのパルチザン部隊の脅威により暗転、悲劇へと向かい始めます。

女性の出ない戦争映画は珍しくありませんが、本作の場合は物語の大半が慰安婦を乗せたトラック道中のためむしろ女性の方が多数。
出発時は女性12人に対し、男は主人公の中尉、運転手の軍曹、元凶となるファシスト党の黒シャツ隊少佐の3人だけです。

主人公の中尉はまだマカロニ・ウェスタンに出始める前のトマス・ミリアン(当時32歳)。
マカロニの小汚いヒゲ面しか知りませんでしたが、ヒゲを剃って軍服を着るとこんなにイケメンだったとは意外。始まってしばらくは気づかなかったほどです。

そして慰安婦役の女性陣は非常にハイレベル。
『太陽がいっぱい』のマリー・ラフォレ(当時25歳)、『気狂いピエロ』のアンナ・カリーナ(当時25歳)、『情事』のレア・マッサリ(当時32歳)、他も皆さん美人揃い。

音楽(マリオ・ナシンベーネ)も当時のイタリア映画らしい雰囲気のキレイな旋律。
この監督(ヴァレリオ・ズルリーニ)の作品を観るのは初めてですが、ラストも印象的で思っていた以上の力作でした。
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