おそらく、この作品の観客動員数、歴代日本一は、「およげ!たい焼きくん」のレコード(音楽ソフト)販売数日本一とともに、永遠に破られ無いであろう。
しかし、ドキュメンタリーなのに、脚本4人って‥でもわかるような気がする。(しかも、そのうちの一人は詩人だし。)
市川崑は、オリンピックの記録や順位なんて、どうでもいいのだ。オリンピック出場選手、観客、各国のVIP、競技役員や沿道の人々など、そこに関わる人間ドラマにしか興味がないし、そこだけ幾多のフイルムから物語性のある部分を、抜き出している。
普通は、投げた砲丸の行方を追うが、それを写さず、投げた選手を追い続ける。試合結果より、その瞬間の周りの人々や、選手自身を周到に写すのだ。
「記録か?芸術か?」論争が起こったりしたが、まさに天才市川崑でなければ、成し得なかった作品である。
以下、思いついた事。
古関裕而の壮大なファンファーレに続く、行進曲にのって、各国選手団の厳粛な入場に始まり、聖火点灯まで描く開会式があまりにも素晴らしい。今回の東京オリンピックなんて、足元にも及ばない。
円谷の10,000メートルとマラソン二種目出場。今ならありえない。
女子バレーボール、勝利の瞬間ニコリともせずに、静かに立ち上がる大松監督。
ストイックな依田郁子の、スタート前のせわしないルーティン。
競技自転車がガンガン通る道沿いの、藁葺き屋根の民家の縁側に座る少女だけを映す。
東西ドイツの連合チーム、表彰式はベートーヴェンの「喜びの唄」。
理路整然とした開会式に対比して、各国、人種入り乱れて、和気藹々とした閉会式
などなど。
歴史の瞬間をフィルムに残した貴重な2時間50分。
レニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」と双璧のスポーツ・ドキュメンタリーである。