カラン

パリところどころのカランのレビュー・感想・評価

パリところどころ(1965年製作の映画)
3.5
バーベット・シュローダーは、『モア』(1969)や『ルームメイト』(1992)の監督をしたり、ジャック・リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)に出演した映画人であるが、彼が21歳の時にロメールを中心に映画のプロダクション会社を興した。その彼が製作にまわってこのオムニバスはできたらしい。

原題は「〜が見たパリの街」という意味である。総じて、屋内描写が多く、冒頭で各所を少し撮影しているくらいなのが、良くない。トリュフォーだって『大人は分かってくれない』でかなりパリの街を映していたが、大事なんだよね、映画空間を作るのって。このオムニバスは全篇がそれぞれ違うパリということだから尚更なのに、あまりにロケが少ない。そこはちょっとプロデューサーとしてね〜、伝えないとね。ロメールは同じ会社内だからツーカーなのか、ロケが多いは多い。


① 「サンジェルマン=デプレ」
(監督:ジャン・ドゥーシェ)

アメリカ人の女子大学生みたいのがカフェ・ド・フロールでナンパされて、ベントレーに乗って、夜のなかへ消えていき、ベッドで、目が覚めて、、、なのだが、ナレーションが気取っている。ベントレーで夜の街を映さないと。金がないからベントレーを撮れないというなら、そもそも映画向きの脚本ではない。


②「北駅」
(監督:ジャン・ルーシュ)

すでに記憶から消えたが、よかった気が。


③「サン=ドニ街」
(監督:ジャン=ダニエル・ポレ)

生真面目だが冴えない皿洗いの男が、娼婦を買い、自室にいれる。女が「やる?」と聞いても、まだいい、食事をしよう、コーヒーを飲もう、、、といつまでもやらない。話が短編に向いているし、2人の役者もいい。しかし、小津安二郎のようなかちこちのカットバックが食事中続く。緊張や気まずさを煽ろうとしたのだろうが、短編なのにちょっと疲れた。このオムニバスの中で脚本と役者は最も良かった。


④「エトワール広場」
(監督:エリック・ロメール)

紳士服店の店員で傘を持ったスノッブないでたちの男が広場で男に絡まれてれ、その男を殺してしまったのではないかと焦燥にかられる。ちょっと尺が足りなかったか。また、ラストも弱いか。後年の作品のような若い女の子は出てこない。このオムニバスの中で、最も頻繁にパリの街を動き回るものの、円形のエトワール広場をぐるぐるしちゃう。


⑤「モンパルナスとルヴァロワ」
(監督:ジャン=リュック・ゴダール)

『女は女である』(1962)で、ジャン=ポール・ベルモンドがアンナ・カリーナにカフェで話す、2人の男に手紙を書き、その宛先を入れ違えてしまったと思い込み、それぞれに会いにいく、という小話を短編に仕立てたもの。ジョアンナ・シムカスのメイクが可愛い。チェックのコート、エンジのセーターと全く同じではないが、『女は女である』のアンナ・カリーナのカラーとほぼ同じ。つまり『女は女である』の話はこの短編を参照して解釈せよということなのだろうが、早くセックスしようと鉄板インスターレーションのアーティストにも、板金屋の技師にもセーターを脱いで誘うも、淫売呼ばわれされて、叩き出される。


⑥「ラミュエット」
(監督:クロード・シャブロル)

閑静で裕福な白い家、、、の中。少年、父親、母親、メイド。父がメイドに吸い付き、少年が見ると、口止めしてきて、母は機嫌が悪い、、、。まあ、このシリーズでは映画的に1番面白いかな。


Blu-ray。総じて画質が悪い。DVDからBlu-rayにコンバートしただけなのだろう。
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