Omizu

鉛の時代のOmizuのレビュー・感想・評価

鉛の時代(1981年製作の映画)
3.8
【第38回ヴェネツィア映画祭 金獅子賞】
『ハンナ・アーレント』などのドイツの巨匠マルガレーテ・フォン・トロッタ監督作品。長編三作目にしてヴェネツィア映画祭で最高賞を受賞した。

鉛の時代とは、国家や軍部による国民の弾圧、反政府武装組織によるテロ活動など、内戦に至らないものの激しい暴力の応酬が続く混乱した時代を指す言葉である。「鉛」とは弾丸や銃撃のことを指す。(Wiki引用)

本作ではドイツにおける「鉛の時代」を描いてる。妹が政治犯として収監されたジャーナリストの姉がその闇に迫っていく。政治的背景があるものの、概ね姉妹の話になっていてみやすい。

サブスクにもDVDにもなっておらず、一生観られないやつかなと思っていたらなんとアマプラのよく知らないチャンネルに来ていた。

フォン・トロッタ監督作品はこれが初鑑賞だが、非常にみやすい。複雑な政治スリラーにもできそうな題材をミニマルに上手くまとめている。

唐突な終わり方にはやや難ありだが、「ここから先は私たちの物語です」と言われているような気がしてこれはこれでアリ。

何か重大なことをやらかした妹、彼女が具体的に何をしたのかは描かれないが、これで十分伝わる。姉の視点で進むことで姉妹の確執と関係性の変化というものも描かれる。上手い構成だ。

全体を通して素直に面白いと思える映画だった。フォン・トロッタ監督のスッキリした演出手腕も窺える秀作。日本であまり観られていないのがもったいない知られざる名作だと思う。
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