柏エシディシ

愛の奇跡/ア・チャイルド・イズ・ウェイティングの柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
カサヴェテス監督3作目にして、製作側と作品の方向性で激しく対立、以後カサヴェテスがインディペンデントへと袂を分つ切っ掛けとなったいわくつきの一本。
しかし、これがおもわぬ良作。最後はほんのり涙してしまった。
確かに後年のカサヴェテスらしからぬセンチメンタルに過ぎるハリウッド製ヒューマンドラマではあるが、ハリウッドナイズされた作劇と、カサヴェテスらしい生々しい人間描写のバランスが独特の雰囲気を醸し出しているユニークな作品だと思う。
バート・ランカスター、ジュディ・ガーランドという本来なら非カサヴェテス的な大スター2人も、作品のテーマに誠心誠意向き合っている様子。(本作の監督にカサヴェテスを推したのは気骨の人バートランカスター本人らしい)
特にキャリア晩年に差し掛かっていたジュディは自身の精神変遷を多分に重なる本作の参加をどう思っていたのだろうか。
ファンとしては胸が熱くなる。
そして、そんな大女優に相対することになる、まだ歳若いジーナ・ローランズ。こちらもまた、短い出演ながらカサヴェテス的なものを纏った確かな演技力を見せていて流石。
この2人の共演を観れるだけでも、ふたりのファンとしては感涙ものだ。
無名の子供たちの自然な表情を捉えたシーンも素晴らしい。プロット自体は少しセンチメンタルに過ぎるきらいもあるが、この頃のハリウッドの時代性を考えれば、だいぶ先駆けたテーマである様に思う。
「私たちに何が出来るか、ではなく、彼らが何を成し遂げられるか、だ」という科白は重い。
柏エシディシ

柏エシディシ