カツマ

ロスト・ワールド/ジュラシック・パークのカツマのレビュー・感想・評価

3.8
人は何故、入ってはいけない場所へと土足で踏み入り、そして犯してはならない禁忌を犯すのか。人類はあの惨劇から学ぶことをせず、欲にまみれて恐竜の島という宝物庫へと手を伸ばす。だが、それは新たなる悲劇の始まり。人類に恐竜たちを操ることなど出来やしない。失われた世界にメスを入れることは神をも恐れぬ人類の罪。探索隊はいつしか決死のサバイバルへと姿を変えた。

『ジュラシック・パーク』の続編は、マイケル・クライトンの小説の執筆と同時進行で進められ、結果として原作と映画で内容に大きな変化が見られるのは致し方ない事態となった。今作では一作目で生き残ったマルコム博士を主人公とし、新キャラも多数追加。恐竜を培養していた島に降り立った探索隊を絶体絶命の危機が何度も襲う。前作よりもパニック映画寄りとなり、人間の欲や業が導いた自滅行為を、恐竜という媒体を用いてパワフルに映像化。恐竜の世界は広がり、そして、人類のテリトリーをも脅かせる事態となった。

〜あらすじ〜

とある島でバカンスを楽しんでいた一家に振りかかった悲劇。それは浜辺で遊んでいた少女が小さな恐竜の群れに襲われ怪我をした、というもので、少女の命に別条はなかったが、島を管理していたジョン・ハモンドは代表権を失い、甥のピーターに全権が委任されることとなった。
ピーターにはジュラシック・パークを再建するという野心があり、インジェン社からハモンドを締め出し、アメリカ本土にパークを建設しようとしていた。
そんな折、かつてのジュラシック・パークの事件で一名を取り留めたイアン・マルコム博士は、ハモンドに呼び出され、彼の屋敷で驚くべき話を聞いた。それはマルコムたちが恐竜たちと遭遇したあのジュラシック・パークとは別に、恐竜たちを増産している島が存在していたという事実であった。その島こそが少女が襲われて怪我をした島であり、ハモンドはマルコムにその島の恐竜の生態調査チームに入るよう依頼してきたのだが・・。

〜見どころと感想〜

ジュラシック・パークとは異なるもう一つ恐竜の島があった!という新展開からスタートする第二弾では、恐竜を守ろうとする者、恐竜を捕獲しようとする者、恐竜から逃れようとする者、といったそれぞれのキャラクターの意思が別々の方向に向いており、それが次第に衝突を生みながらも、最悪の結末へと雪崩れ込んでいく物語である。前作よりも欲に目が眩んだ人類を醜く描き、恐竜の暴走が人災として明示されている点が今作の大きな特徴である。恐竜はより恐ろしい対象として具現化され、人間たちはなす術もなく殺されていくのであった。

主演には前作にも出演していたジェフ・ゴールドブラムを抜擢。一作目では皮肉屋の数学者として描かれていたキャラだが、パークの恐ろしさを知った影響ですっかり丸くなっており、恋人や子供に振り回される性格に変わっている。そんなマルコム博士の恋人役として、若きジュリアン・ムーアが登場。溌剌でやや無鉄砲なキャラクターは今の彼女のイメージとしては遠いが、この頃、すでに多くの作品を経験済みでもあった。他には最近、主演作『ザ・スイッチ』が話題を呼んだヴィンス・ヴォーンが出演しているなど主要キャストは何気に豪華であった。

今作ではティラノサウルスが全編で登場しまくるため、ラプトルの存在感はやや薄れているか。その分、巨大な肉食獣として描かれるT-レックスは迫力満点で、前作以上に恐竜の恐ろしさを体感できる作品ともなっている。だが、恐竜がただ無差別に人を殺しているというわけではなく、あくまで原因は人間側。真の敵は恐竜ではなく、人間。恐竜と人間は共存できない、というテーマを強く残しつつ、ジュラシックシリーズは次なる惨劇へと向かうのであった。

〜あとがき〜

ジュラシック祭り第二弾はどうしても第一作よりも評価を落としてしまう続編です。前作と同じくスピルバーグが監督しているものの、物語が原作とは異なる代物となっているため、エンタメ、パニック要素強めの大作映画らしい作りに変わっています。

ラジー賞にもいくつかノミネートするなど当時は散々言われもした本作ですが、今見返すと普通に面白いですね(笑)『ジュラシック・パーク』が本来持っていた夢のような寓話ではなくなってしまったのは残念ですが、シリーズを繋いでくれた作品として大きな意義がある一本だったと思いますね。
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