カツマ

カラオケ行こ!のカツマのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.8
青春は大変だ。誰にも言えない事情があって、親にも相談できないし、でも弱音だって吐きたくない。そんな時、ヤクザのお兄さんからいきなり、そう、あまりにもいきなりカラオケに誘われたら君はどうする?怖いけれど面白い。頓狂だけど愛おしい。いつだって二人のそばにはある歌が寄り添っていた。そう、紅という名曲が・・。

和山やまの漫画『カラオケ行こ!』はシリーズというわけではなく、漫画一冊の中に込められた魂と絆の物語である。原作が面白いだけに実写化には高いハードルが求められたが、キャスト陣の奮闘と邦画特有のコメディ要素との相性の良さもあり、凡庸な実写化というレッテルは回避されている。楽しくて、泣けて、笑えて、紅を何度も聞かされる。この映画を観て、やはりというかカラオケに行きたくなった。選曲は大事。そう、いつだって、選曲を間違えるとカラオケは袋小路に迷い込むのであった。

〜あらすじ〜

合唱部の名門校で部長を務める中学生、岡聡美は、合唱コンクールを終えた後、雨に降られてずぶ濡れのヤクザ、成田狂児にいきなりカラオケに誘われる。あまりにも怪しすぎる誘いに、聡美は一旦は固辞するも、成田は聡美の学校にまで現れて、結局、聡美は押し切られる形で成田と一緒にカラオケに行くことになった。
聡美をカラオケに誘った成田には切実な理由があった。それは成田の組のカラオケ大会で最下位になった組員には、恐ろしい罰ゲームが待っており、成田はどうしてもその罰ゲームを回避したかった。藁にもすがる想いで聡美に歌の教えを乞う成田だが、彼の選曲は超高音のキーを必要とするX JAPANの『紅』で、成田はこの歌を裏声で歌っている始末であった。成田からアドバイスを求められた聡美はとりあえず成田の裏声が気持ち悪い、ということしか出来ず・・。

〜見どころと感想〜

そもそも原作がかなりの完成度なため、その世界観をどれだけ維持できるか、が今作のテーマだったと思う。結果、軽微なアレンジも上手く機能しており、邦画らしい邦画に纏まっている。元々コメディタッチが強い作品なので、いつもなら食傷気味になるエンタメ邦画のテンポもハマっており、シンプルな物語を無理に引き伸ばすような改悪も行われていないようだった。

キャストではまず主演の中学生を演じた齋藤潤が絶妙な配役。彼はオーディションでの選抜だったらしいけれど、まだまだ今後の飛躍が楽しみな存在である。そして、成田役の綾野剛は過去にもヤクザの役をこなしているため特に違和感なし。原作のヤクザとはビジュアルや雰囲気が異なっているものの、これはこれであり、と思わせるさすがの存在感を見せている。基本的にはこの二人のキャスティングがハマっているのが非常に大きい。もしキャストがコケていたら駄作になっていた可能性は高いと思った。

ハイライトはヤクザのお兄さんたちがカラオケボックスに総集合する中盤だろうか。このあたりはコメディ全開だし、そもそも成田は練習しなくても最下位にならないのでは?というくらいにみんな歌が下手すぎる。ただ、本来はハイライトになってほしいクライマックスがシュールな雰囲気になってしまったのは惜しかった。漫画だとかなり激しく表現されているので、もう少しエモーショナルさがほしかった。けれど気になったのはそのくらいで、終わってみればサクッと観れる良作でした。

〜あとがき〜

元々、奥さんに勧められて読んでいた『カラオケ行こ!』の原作でしたが、実写化との相性は良いと思っていたので、映画化は嬉しかったです。やっぱりコメディ要素が面白かったですね。中学生の描き方も絶妙。拗らせまくりの後輩くんも良い味出してました。

最後の熱唱だけが惜しかったのでこの点数ですが、まだまだ続きが観たい気も。エンドロールの後に伸びているであろう物語に想いを馳せたいと思いますね。
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