ミーハー女子大生

ハウルの動く城のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
4.3
【あらすじ】
父親の帽子店で日々、帽子を作りつづけていた18歳のソフィーは、ある日、荒地の魔女に呪いをかけられ90歳の老婆になってしまった。
ソフィーはハンサムだが弱虫な魔法使いハウルと出会い、奇妙な共同生活を始める。

【感想】
何回観たか分からないくらい大好きな作品。
無性に観たくなって再鑑賞。

どんな時でも凛としていて、正しいことを見抜き、世の中に対してひたすら真っ直ぐな態度で生きていく主人公の姿には、男女関係無く見習うべきものがあるでしょう。
ハウルに関しても、心が子供のままとはいえ、 正しいことを見抜く力があるのは主人公と同じで、主人公は彼に一目惚れしていたとはいえ、それが愛に変わったのは、ハウルのそういったところに惹かれたからなのでしょう。
愛がもたらす心の余裕、寛大さと、愛が持つ、どんな暗い世の中でも、人生を楽しいものに変えてしまう大いなる力など、愛のポジティブな面がよく表現されています。
それにしても、テーマ音楽である「人生のメリーゴーランド」が、戦時中を強く生きる主人公の姿と本当に合うこと!  

また、今作では“戦争”に対する皮肉交じりなメッセージが感じられるのですが、そのメッセージは、
・戦時中というのにあまりも平穏優美な王宮。
・サリマンによる、王陛下が偽者(ハウルの変身した姿)と分かった上での、「今日の陛下は能弁ですこと」というセリフ。
・王の、まるでゲームでもしているかのような、戦争を楽しむ態度。
・街が戦火で混乱する中、それでも人民や町のことは考えないで、主人公を追い回す私的な政策(一応悪質魔法使い一掃の名目があるとはいえ、状況も考えずにということ)。
・そして戦争自体がお偉いさんの個人的な都合で行われているということを暗示させる、ラストのサリマンのセリフ。
などに隠されて表現されています。     

メインの話はそうした恋物語と戦争の話なのでしょうが、この映画はジブリ至上最も解釈の仕方に自由のある作品で、無限の世界/宇宙を持つ一級の芸術作品という一面を持っています。
無限の宇宙を秘めた芸術作品は、ピカソやマティスなどが得意としていましたが、“ストーリー”を持つことで、形というものがありながら、そういった無限の世界を表現をするというのはあまりにも難しいことであり、そうした観点から、私は、この作品がそれらの作品に匹敵する芸術性を持っている、と勝手に思い込んでいます。
その作品を一人ではなく、大勢で作ったのだから、それはそれはとんでもないことを成し遂げたと、いくら評価しても足りない位です。  

映像美や、圧倒的なイマジネーションに目を奪われて、一回見ただけではどんな話だったか理解し難いのが駿さんの作品の特徴ですが、今回はその傾向が特に強いと思います。
どうか一回見ただけで、訳が分からなかった!駄作だ!!などと批判せずに、何度も見て、考えて、純粋にこの作品が持つ魅力を楽しんでいただきたいです。

ストーリー 4
演出 5
音楽 5
印象 4
独創性 4
関心度 4
総合 4.3

33/2023