イワシ

ピーター・パンのイワシのレビュー・感想・評価

ピーター・パン(1924年製作の映画)
4.3
空飛ぶ子ども達を両親が目撃し出奔を嘆く場面があり、それが帰郷の主題を際立たせる。「ホーム・スイート・ホーム」を弾きながらいなくなった我が子を想って泣くエスター・ラルストンとドア越しにそれを聴くベティ・ロビンソン。ジェームズ・ウォン・ハウの美しいショット。

フィリップ・デ・レイシーが宙に浮く瞬間が素晴らしい。ベッドから浮上して前方に飛び出して画面からフレームアウトするまでのワンカット。もちろんトリックによる浮遊だが、デ・レイシーの身体が実際に宙に浮いたことをカメラは記録していることに間違いはない。浮上という出来事が身体性をともなって現前している感じ。

海賊への入団を迫る場面と家に招き入れたロスト・ボーイズを両親に紹介する場面が明確に対比になってて、これは同原作の映像化作品のなかでも帰郷の主題が最も強く現れている。海賊旗が下され星条旗(!)が掲げれることも象徴的。ドア/窓越しに佇むベティ・ロビンソンの未帰還/脱走者性も際立つ。

ロスト・ボーイズとの共同生活描写は今作が最も好き。魔法のように組み立てられる小屋を入口にした地下の居住空間や(滑り台!)や木の葉で出来たベッドも良いが、子どもたちのアクションが真剣な喜びに満ちていて素晴らしい。それは海賊との剣戟でも発揮され、迷いなくトドメを突き刺しにっこり笑う。
イワシ

イワシ