えびちゃん

太陽はひとりぼっちのえびちゃんのレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
4.0
アントニオーニ監督、愛の不毛三部作のうちの一作ということだが、三作とも勝手で都合の良い愛にすがる人間模様をみた。『情事』は、友人を失った悲しみと愛の萌芽にとまどい、罪悪感に苛まれるふたりの不器用な姿をみた。
『夜』は倦怠期の夫婦が過ごすある一夜…夫を愛していない妻の心の放浪と狡くて弱い夫との再構築(するかどうかは描かれていないがそう解釈。期せずして同じタイミングでカサヴェテスのフェイシズを観てしまい、あまりにも同じテーマでのけぞってしまった)。
最後の『太陽はひとりぼっち』顔見知りだった男女が深い関係へ辿っていく様子を見守る形なのだが、男女の関係とはそううまくいかんね。
このふたり、もう二度と会わないだろうな。
惹かれていたことは事実で、誰とも通じ合えない孤独を感じていた。過ごすうちにちょっとの"違う"が積み重なっていきあと一歩の関係直前でもう醒めている…これは…誰しも経験あるんでないかと思う…。
終盤、二人で過ごした場所をショットで重ねていく手法は明らかにビフォア・サンライズだった。ただし思い出に涙が滲むような感傷は伴わない。かなり残酷なビフォア・サンライズ…朝日が昇るころ、二人ともに過ごす時間はこの先訪れない。
三作を通じて、わたしたちは脆くて頼りなくて信じるに値しないにもかかわらず愛を求め続ける不完全な存在だと思い知らされた。
厳しさと情けなさに溢れているがやっぱりアントニオーニ良い。
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