かすとり体力

ダーウィンの悪夢のかすとり体力のレビュー・感想・評価

ダーウィンの悪夢(2004年製作の映画)
3.5
前々から強烈なアートワークが気になっていたものの、ドキュメンタリー映画という形式に若干の抵抗があり手を伸ばせずにいたもの。
先般、同じくドキュメンタリーの「SNS少女たちの10日間」を鑑賞し、結構面白かったので、こちらにも手を出しました。

アフリカ・タンザニアの美しい湖「ヴィクトリア湖」で外来魚「ナイルパーチ」が繁殖し始め、この国の一大産業に成長するも、その陰では貧困をより助長する悪循環が発生し始め・・・といったお話し。

ドキュメンタリー映画という形式に慣れていないため、他の同系作品と比較してどうこう、ということは言いにくいんだけど、正直そんなに面白いものではない。テンポが遅いのと、情報の交通整理にもう少しやりようがある気がするんだけど、
前作「SNS〜」でも同じ感想を抱いたので、そもそもドキュメンタリー映画ってこんな感じなのかもしれない。

一方、描かれる深刻な状況の迫力・説得力はなかなかのもの。

サラリーマンとしては、やはり最近「サプライチェーンマネジメント」「人権デューデリジェンス」など、素材や部品の調達先(直接の取引先だけではなく、その先の先、海外の一次生産者等まで)への配慮が企業に求められるようになって来たのを肌で感じており、本作は結構昔の映画ではあるが、本作で炙り出されるような状況はいまだに変わっていないんだろうな、と感じた。

作中で、ナイルパーチの輸出先として日本の名前も挙がっており、そういう意味ではまさに「サプライチェーンマネジメント」案件。
このムーブが軌道に乗れば、「現地での人権侵害がないというエビデンスを示せない企業からは商品を仕入れできない」みたいなルールになるため、本作で描かれた事案等も防げるかとも思う一方、なんだかんだ、ルールの隙間をすり抜けて同じような状況が再生産されてしまう気もするのが怖いところ・・・。

結局、本作の状況でもナイルパーチ自体が悪いわけではないんだよな。これは一つのきっかけに過ぎず、ナイルパーチが「触媒」として機能した結果、先進国と途上国の格差が持つ構造的な歪みが、立場が弱いほうから噴き出したということだと思う。

そして、このナイルパーチ起点で負の因果律が駆動し始め、最終的に地獄のようなエコシステムが構築されていることが明かされていく様は、壮絶。こんなもん、どうしようもねぇじゃん。
そう思ってしまう。

そのような中、映画のラスト、飛行機を見つめる女性を映してこの作品は幕を閉じるわけだが、ここから来る余韻にはなかなかのものがある。。

静かに重たくのしかかってくるような作品だった。
かすとり体力

かすとり体力