エンディングで泣かせてくれる作品は数多くありますが、オープニングから泣かせてくれる作品はそうはない。
フェデリコ・フェリーニ監督の『アマルコルド』は、そんな気持ちにさせてくれる稀有な作品です。
「アマルコルド」とは、フェリーニの故郷、イタリア北部の方言の、
「私は覚えている」という意味のエム・エルコルドがなまったものらしいです。
イタリアの田舎町。
この街では冬が終わって春がやってくると、町中に綿毛が舞い踊る。
その綿毛が舞うシーンの美しいこと。
厳しい冬を耐えて優しい春の訪れを見事に描いた素敵なオープニングなんです。
これだけで泣ける!
巨大客船を町中の人間全員で観に行くシーンや、主人公の男の子(15歳)が大きなお尻の女の人に弄ばれるシーン、木枯らしの音がそのままワルツのリズムになって静かに踊りだすシーンなど、この作品のことを思い出すと次々と名場面がよみがえってきます。
ニーノ・ロータの音楽も最高。
霧の中で牛(だったかな)に偶然出会ってしまい、それが幻だったのかもしれないなんてシーンは、『ラジオ・デイズ』(1987)や『スタンド・バイ・ミー』(1986)にオマージュされていますね。
少年たちが冬に羽織っているマント。
ああいうのもいいなあ。
イタリア系の映画でよく屋外パーティーをやっているシーンがありますが、本作での屋外での結婚式のシーンもいいんですよ!
盲目のアコーディオン弾きのおじさんがいい味出しててね。
ムッソリーニの影が広まっていき、ファシズムに飲み込まれそうになる街。でも、人々は大らかなんだよね。
なんでもない田舎町での何でもない一年。
オープニングで春の訪れを告げた綿毛は、エンディングで別れを象徴することになるところなど、何とも言えない気持ちになってうれしくなる。
ノスタルジー映画好きの私。
ひょっとしたら、「8 1/2」より好きかもしれない。
何度でも観たくなる。
おススメします!