このレビューはネタバレを含みます
見終わっても何がなんだかわからない映画とか本ってありますけど、この作品はその手のものとは違う、というのが私の感想です。
たしかに「謎」は解き明かされはしませんけど、タイトルに「謎」と付けられた意図は充分に描かれていたように感じました。
役人? が保護されたカスパーの身体チェックをする際、書記に「正確に(調書)をとっておけ!」と言います。カスパーが何者であるか解明するために調書を「正確に」とっておく必要があるのです。
言われた通り、書記はことあるごとにカスパーのすべてを「正確に」調書として記録していきます。
そして、ラストはこの書記の以下のセリフで終わります。
「見事な調書だ
正確無比だよ
私はこれから調書をつくるんだ
ハウザーに異常が発見された記録だ
遂にあの異常な人間の説明がついた
これ以上見事な解明はできないだろう」
冒頭に書きましたが、この映画はカスパーが発見されてから暗殺されるまでを淡々と描いているだけで、謎は明かされません。
なのに、書記は「説明がついた、見事な解明」と言っています。
「謎」があるかどうか以前に、「謎」と決めつけている、「謎」をつくろうとしているのは私たちなんでしょう。
ひょっとしたらカスパーには、謎なんかないのかもしれません。
※もちろん、史実でのカスパー・ハウザーには諸説あってしかるべきだと思いますので、あれこれ考察した作品も見てみたいです。
※余談ですが、「アルジャーノンに花束を」の元ネタってカスパー・ハウザーだったりするんですかね?
※さらに余談ですが、カスパーのあの独特な表情は一度見たら頭から離れないのですが、変わり者(キ○ガイ)をきどるミュージシャンがしがちなキメ顔のテンプレートにもなっているんでしょうか?