三四郎

風の女王の三四郎のレビュー・感想・評価

風の女王(1938年製作の映画)
3.0
男と女の間に友情は成立するや否や。
最後はなかなかシビアにも関わらず、新たな明日を信じるかのような明るいメロディに風が吹いている。
冒頭
見渡す限り銀世界でのスキー。当時スキーが流行っていたのだろう。
「ああ良い気持ち、こんな景色を眺めてると、毎日会社でタイプライターなんか打ってるのバカバカしくなる、ねぇ?そう思わない?」「朝から晩まで生活生活、それ以外になんにもないなんて寂し過ぎるもん」
雪山の景色に感激している三宅邦子、それに対して、「人間のいる世界でないと感激しない」と言う森川まさみ。「人間の世界には冒険がある、秘密がある、恋愛がある」「私知っててよ、ちゃんと見抜いてるんだから(略)君はウチの会社のミツセくんを心密かに愛してるんだろ?あの人会社じゃ一番男性的でしっかりしてるからなぁ」男っぽい喋り方も当時の女学生上がりを彷彿させる。戦前の映画は、科白、場所、構図、音楽、あらゆることに興味が惹かれる!現代と変わらぬ感覚の人々。もし戦争がなければ、どう発展していたのだろうか。

姉がお土産に買ってきたホールケーキも立派だ笑
佐野周二からの速達は丸の内のアリゾナで会おうというもので「私はあなたに美しい幸福をもたらしてあげたい願いでいっぱいなのです」と結ばれている。キザでロマンチック。青年重役からこのような手紙をもらうのは、たしかに妹役の高杉早苗が言う通り「アメリカ映画のストーリー」みたいだ。

妹役の高杉早苗はストレートに言いたいことを言ってのける。自ら「愛人にして」と言うなんて、現代の感覚からしてもぶっ飛んでいるぞ、モダンガール!告白も実に華麗で直球ど真ん中!流れるようなお喋りからの愛の告白。その瞬間、佐野周二がタバコに火をつけ、その煙が彼の顔の前に広がり「えっ?」と驚く。素敵な演出だ。
このモガは、石坂洋次郎の「若い人」を読んでいる。つまり、彼女はこの小説のヒロインのようにエキセントリックで「行動的な女性」であると暗示しているのだろう。
姉は、会社でタイプライターを打ち、社命でパリへ赴任もするような職業婦人で新しい時代の女性だが、内面はおとなしい。妹は行動的で手段を選ばぬ大胆さがあり、さらなる新時代の女性を体現していると言えようか。

しかし最後がシビアだった。佐野周二…深い苦痛で自殺したのか…?
男を自殺に追い込んどいて、姉はパリへ栄転、妹もなんとか前向きに生きようとする…、結末はこれで良いのだろうか…。後味が悪い。

戦前から戦後にかけて、松竹作品にはスケート場がそれなりによく登場する。スケート好きな撮影スタッフでもいたのかしら。
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