ちいさな泥棒

夜と霧のちいさな泥棒のレビュー・感想・評価

夜と霧(1955年製作の映画)
-
ずっと観たかった『夜と霧』

"夜と霧"とはあのなかでのグループ分けの名前だったらしい。

スコアつけましたがやっぱりちがうなと思ったのでスコアなしです。

日頃テレビにしろドラマにしろ映画にしろ、ああでもないこうでもないとボソッとでも言いがちな私達夫婦が、はじまってからひとっことも話さず最後まで観きりました。終わってからもしばらく口をきかないまま、ため息も出ないままそれぞれが一息をついてやっと「凄かったね…」とポツリと話始められたほど、吸引力も資料としても重みが凄い。

当時のモノクロの映像と現在草木が生えわたっているカラーの映像。

だいたい上空からか、外にたくさん人が並ばされていたり歩かされている場面ばかりを目にしていたので、目線の高さで建物の造形や並びを見るとゾッとくるものがある。そこに出入りしていた人、寝起きしていたベッドとも呼べないベッド。

病院に行ってやっとちゃんとしたベッドで寝れると思ったらむしろ苦しむことになる。様々な実験台にもされて足の甲の皮膚が長方形に切り取られて中が見えてるシーンがもう見てらんなくて。ガーゼを当ててなんかしてたけど、あの環境下だから化膿したり消毒するのも激痛だったんだろうなぁなんて、、、

冒頭から最後まで辛辣なナレーションがさらに刺すように気持ちを煽ってくる。うろ覚えで申し訳ないのですが「しかしここで起きていたことは、結局自分達とは別世界の遠いどこかの出来事だと、自分達とは関係ないことだと思ってしまうのだ」的なナレーションが胸にきた。

「こんなことは繰り返してはいけない。なんでこんな酷いことができるのか…」と思っていても、それはそう思える余裕がある、環境にいるということで、どこか遠い場所の出来事、自分の身には起きない出来事、現実にはあり得ない、別に無関係だと切り離している…「そんなことない!」と100%の熱量で口では言いきっても、どんな形であれ誰しもが心の隅ではこのような気持ちを持ってしまっていることは確かなんだよな、否めないんだよな…とまた暗い気持ちになりました。

「そんなことない!」=「そんなはずはない!」
裏返しのような気持ちにさせられ、反発したり否めないとなったり、いったりきたりするこの思いが胸の中で何度も何度も繰り返され倫理観をだいぶ揺さぶられた。


忘れられないのは死体が大量すぎて処理に困ったというお話。ブルドーザーで大きな穴にゴミのように棄てる場面は観たことがあったのですが、皮膚のリサイクル法やら髪の毛のリサイクル法が衝撃で。「こちらは入所した時に切った女性の髪の毛です」って映すんだけど、映せど映せど終わりが見えない…とにかく大量で、うまく表現できないけど立ってたら膝から崩れ落ちてたかも。その髪の毛は毛布になったそうです。

詳しくない人でもガス室は何かで目にしたことはあるかもしれませんが、こちらはガス室の天井に残された引っ掻き傷を舐めるように撮っていました。パニックになってもがいてどうにか逃げようとしたんだろうかとか色々なことを想像してまたさらに暗い気持ちになりました。

ほかにも色々書きたいことがあるので、思い出したらまた追記します。