ミーハー女子大生

ハリー・ポッターと賢者の石のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

4.8
【あらすじ】
両親の死後、親戚の家に預けられたハリー・ポッター少年。
そこでは階段下の物置部屋をあてがわれ、何かとこき使われる毎日。
そんなある日、ハリーの11歳の誕生日に一通の手紙が届いた。
中身はなんと、魔法魔術学校の入学許可証だった。実
は、ハリーの両親は優秀な魔法使いだったのだ。
手紙に導かれるままホグワーツ魔法魔術学校にたどり着いたハリーは、さっそく魔法使いになるための勉強を始める。
ロンとハーマイオニーという友達もでき、楽しい毎日を送るハリーだったが、やがて学校に隠された驚くべき秘密に気づくのだった…。

【感想】
⭐︎私的好きなダンブルドア先生の名言
"And finally, it takes a great deal of bravery to stand up to your enemies, but a great deal more to stand up to your friends."
「最後に、敵に立ち向かうには勇気が必要じゃが、友に立ち向かうほうが大変じゃ。」

金曜ロードショーで放送されていたので改めて原点を見てみた。
今迄、感じなかったシリーズを通した意味が、浮かびあがってきた気がした。
シリーズの根本を為していたのが、なんだったのか。
それは、差別の愚かさだったのかもしれないと。

ハリーは、ダドリー夫妻のもとで、生まれた時から徹底した、差別をされて育てられた。自分の子ではないという差別、魔法使いの血を持つという差別。
そして、ここで差別されるという悲しみや、虚しさを徹底的に味わう。
そう、差別なんか絶対にしてはいけない、という心を育んだ。

その後、彼は魔法学校で、特別扱いをされる。
もしも、ここで彼が普通に育てられていたら、自分は、特別だという意識が増長して、迷わずマルフォイと握手をしただろう。
でもロンをマグルと馬鹿にする彼に、瞬間的に差別心を感じ取り、嫌悪感を覚える。
そして、マルフォイを避け、ロンやハーマイオニーと仲良くなっていく。
人を出生で差別する奴なんて、大嫌いだと。
ハリーがヴォルデモートの心を封じ込めた瞬間だ。

世の中には、あらゆる差別が蔓延する。
人種、出生、宗教、思想、派閥、学歴、容姿、体力、地位。
ありとあらゆる差別という壁をつくり、いざこざ、虐待、いじめや紛争、戦争を巻き起こす。

マルフォイは、徹底した差別を目指す。
シリーズの回が重なると、差別に賛同する大勢の人達も出てくる。
正にヴォルデモートの心が蔓延していく。
差別が顕在化した世界、それがシリーズ後半の灰色の世界なのかも知れない。
暗く陰気で、大勢の人が死んでいく世界。
現実も同じだ。
一部の優越感を持つものだけが、喜ぶ。
でもその実態は、アウシュビッツの様な灰色の死の世界。
自分の考えに賛同しないものを、殺していく、
差別の行き着く世界を目の当たりにして、マルフォイの心も変わっていく。

シリーズラストで、ヴォルデモートは、結局自分自身の攻撃でやられる。
ここだけ見たら、オウンゴールはありえない等と、思ったが、シリーズで見ると、凄く意味のあるようにも見えてくる。
差別するものは、結局自分自身の考えに滅ぼされるのだと。

シリーズラストで、ハリーが最強の杖を折るのは、最も大切なシーンだ。
誰かが、巨大な力を持つ、そこから又新たな差別が続いていく。
だから彼はそれを折るのだ。
何のためらいも無く。

そして、偉業を成し遂げた、ハリーを中心とする人達は、シリーズラストで普通の人として、登場する。
浅はかな考えだと、魔法省のトップとなり、マントを翻し、これ見よがしの主導者になっていないのかと思ってしまう。
しかし、伝えたい事はまるで違う。
差別が生む、恐怖やおぞましさを呼び戻さないために、普通にしているのだ。
彼らは、もしかしたら魔法省のトップかも知れない。
でもそうであったとしても、自分達が偉くなるために主導者になるのではない。
誰かが誰かよりも、偉いとか偉くないなどと言わない為に、そんなことは、弊害であり、遥かに大切な事があると、伝える為に主導者になるのだ。
だから、彼らは普通の人としての姿で、最後に登場したのだと、そんな気がした。

シリーズラストで、ヴォルデモートは、散り、その砕け散った分身は、恐らく世界中の人達の心の中に入り込んだだろう。
でも心配することは無い。
もともと、誰もが、差別心という、愚かな心を持っているからだ。
ハリーにも宿っていた。
しかし、ハリーは一度も完全に支配されることは無かった。

差別の果てには、あのシリーズ後半の灰色の絶望の世界しか待っていない。
誰もが、何かに差別心が出て、ひょっこりヴォルデモートが顔を出したら、この作品を思い出すといい。
その心の先にあるのは、あの灰色の世界なのだと。そんな世界に行きたくなければ、人を差別してはいけないと。

賢者の石は、娯楽大作として、超一流だと思う。
だからその後も、常にそれを求めていた。
でもシリーズを通して、娯楽を超えた、戒めがあったのかも知れない。
賢者の石を振り返って見て、後半のシリーズも再考させられてしまった。
ハリーポッター。 
やはりこれは永遠の名作だ。

ストーリー 5
演出 5
音楽 4
印象 5
独創性 5
関心度 5
総合 4.8

1/2024