イルーナ

月と少年 / La Lunaのイルーナのレビュー・感想・評価

月と少年 / La Luna(2011年製作の映画)
4.3
『あの夏のルカ』のエンリコ・カサローザ監督の短編ということで観てみました。

夜の海に浮かぶ舟、月の質感、まんまマッシモなお父さん。『あの夏のルカ』の原型と言うべき作品になっています。
しかし、本当に美しい作品だ。水平線から昇る満月。月の上に敷き詰められた、ガラスのような石のような質感の大量の星。神秘的で、心が洗われる。
キャラクターも本当にかわいいですね。まさに動く絵本。

初めて一家の仕事場である月にやって来た少年。父と祖父は言い争ってばかりいるが、少年は自分のやり方を見つけて事態を打開する。
そして明かされる仕事内容……、うん、夜空を見上げてみたくなりますね。
調べたら、イタロ・カルヴィーノの短編集『レ・コスミコミケ』収録の『月の距離』が元ネタらしい。機会があったら読んでみよう。

ところで、明らかに見覚えのあった作品なので、一体何と同時上映だったのか調べてみたら……『メリダとおそろしの森』。
日本だと吹き替え問題もあって大コケしてたなぁ……実際内容もピクサーにしてはパッとしなかった印象がある。
正直この作品の方が心に残っているくらいだったのですが、公開から相当経っているし、メリダも今観たら印象変わるかな?

追記
元ネタになったという『月の距離』も読んでみました。
海に浮かんだ小舟からはしごを伝って月へ登っていく描写……本作そのまんまだ!
さらに月の引力に海の生物たちが引き寄せられ、空中に浮かぶ描写は『あの夏のルカ』で星々を魚の群れと表現したシーンに通じる。
本当にこの監督の引き出しの多さに驚くばかりです。

監督ご本人も、カルヴィーノ作品が好きだったと語っていますね。
https://animeanime.jp/article/2012/07/30/10948.html
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