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快盗ルビイのtakのレビュー・感想・評価

快盗ルビイ(1988年製作の映画)
3.7
和田誠先生の仕事は本当に心に残る仕事だった。イラストはユーモアがあって、品があって、描かれるものへの愛があって。そして、絵が添えられた仕事の価値を高めてくれるような仕事。村上春樹の音楽エッセイなんて、文章よりも和田誠先生のイラストを先に思い出すくらい。

「麻雀放浪記」に始まる映画監督としての顔。中でも第2作「快盗ルビイ」が僕は大好きだ。無類の映画好きである和田誠先生が撮ったこの作品は、映画愛と楽しさに満ちている。

原作はショート・ミステリーで知られるヘンリー・スレッサーの「快盗ルビイ・マ-チンスン」。ヒッチコックが自身のTV番組「ヒッチコック劇場」でよく取りあげた作家でもある。原作ではルビイは男のコで、仲間の少年を連れて小さな犯罪をやり遂げるお話。ドーナツショップでフレンチクルーラーをほおばる男の子ルビイを、和田誠先生はキョンキョン扮する留美に置き換えた。

この映画のキョンキョンはまるでオードリー・ヘプバーンのようだった。冒頭、ルビイこと留美は徹(真田広之)が住むマンションの上の階に引っ越してくる。男女の立場こそ違うけど、僕には「ティファニーで朝食を」を思わせる場面じゃない!ジバンシーこそ出てこないけれど、キョンキョン御用達のガールズ・ブランドはしっかり登場。そして徹を振り回す留美は、「ティファニー…」のヒロイン、ホリー・ゴライトリーのようだった。同名主題歌の作曲は大瀧詠一。どこかノスタルジックな曲調が、映画の往年のハリウッド映画みたいな楽しさを盛り上げていた。

思えば、映画雑誌に初めてレビューを投稿したのはこの映画だった。クラシック専門の映画館に通いつめてた頃だったから、こんな日本映画が観たかった!と当時思ってたんだろうなぁ。

和田誠先生は、映画ファンとして多くの著作がある人。その多くを読めてないまま、訃報を聞いたことが残念。少しずつ紐解いていこうと思います。ご冥福をお祈りします。
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