ストレンジラヴ

ロング・グッドバイのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)
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「名前を言いなさい」
「ドナルド・ダック」

ハードボイルドは好きなのだが、チャンドラー作品はほとんど読んだことがない。本は持っているのだけれど、なかなか手が出ず埃をかぶってしまっている。

そんな僕にも、これは変化球だということがよく理解できた。
フィリップ・マーロウといえば、ハードボイルドの代名詞といってもいい存在。だから本来思い浮かべるべき姿は、同じくハードボイルドの代名詞のような存在であるハンフリー・ボガートの方なのだろう。
恐らく本作のエリオット・グールドのマーロウはチャンドラーの描写とは異なるはずだ。
更に言えば、一度に多くの情報が雪崩れ込んできて巻き戻さないと理解が追いつかない場面がいくつかあった。その点で言えば原作をしっかり読んだうえで観るべき作品だったのかもしれない。

ただ、チャンドラーという枠を取り払って、ひとりのシブいオッサンのドラマとして観る分には見応え十分。
いつでもどこでも気怠そうなエリオット・グールドは声のトーンもあってか、どこか阿部寛に似た何かを感じさせた。
所構わずマッチを点火する姿は画になるし、手を変え品を変え流れるジョン・ウィリアムズのスコアも素晴らしかった。何より一見不便としか思えないマーロウのマンションが男心をくすぐる(ただし、隣人はいただけない)。

幸い、我が本棚には村上春樹訳の文庫版と何故か原書が積まれている。これを機にちゃんと読んでみようと思うのであった。