何とも壮絶な物語だった。
ムッソリーニの愛人で、彼の子を産みながら歴史から抹消された女性の半生を描く。実話ベースだけど諸説あるようです。
1910年代、まだ社会党の党員だったムッソリーニと出会い、盲目的に彼を愛した女性イーダ。財産をなげうって彼の政治活動をサポートしながら、やがて彼の子を宿すが、実は彼にはすでに妻子があった。イーダは自分がムッソリーニの妻であると主張するもののムッソリーニはスキャンダルを恐れイーダを精神病院に送り、息子とも引き離してしまう。そして息子もまた悲劇的な人生を送る…
独裁者は何事にも独裁的ということか。
イーダはもともと激しい性格で独占欲も強い。奥さんの存在は自分のアイデンティティをも揺るがしたのかもしれない。愛し方も異常なほどの激しさだった。最後まで自分がムッソリーニの妻であると叫んでいたので偏執症と言われるのも仕方ないかもしれない。
それほどにムッソリーニには魅力とカリスマ性があり、だからこそ国のトップにのぼり詰めたってことなのだろう。
詳しい説明は少なめでイーダの感情にのみフォーカスしている。激情と哀切を渾身の演技で見せたジョヴァンナ・メッゾジョルノが素晴らしかった。
当時のイタリア史をドキュメンタリー映像を挟む斬新な見せ方と壮大なオペラ調の音楽でドラマチックに見せていく。かと思えばチャップリンの『キッド』を観るシーンや雪の舞うシーンなどは繊細で、印象に残る演出が多々ある。この監督の演出は好みだなぁ。
ムッソリーニという男のパワフルさを知ったことも収穫だった。