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今晩おひま?のニューランドのレビュー・感想・評価

今晩おひま?(1959年製作の映画)
3.3
☑️『今晩おひま?』及び『赤いトキ』▶️▶️
日仏学院の企画はそれなりに興味深いが、観れる人は全作·繰返しでも、しかし、一般人にはとても観たい作も追えない上映スケジュール。休みを取ろうにも、発表も遅い。それが昨年辺りから、別の会場でも観れるようになってきてる。
一昨年·昨年で、評価が遅れた、ピークが半世紀前後昔の名匠として、取り上げられたは、ジルとモッキー。私の周辺の、あらゆる映画を初上映時点で殆ど押さえてる強者たちの間では、この2人併せて、秀作は、当時勃興のヌーヴェル·ヴァーグに近い『今晩はおひま?』位で後はお話しにもならない、と感想は一致していた。徹夜仕事明けで、普通は14時くらいまでは眠る所を、この2人になる3本の作品を12時半から見始めて、実は3本目はちと無理、と観ててなってきた。そのせいか、初めて観れた評判ピカイチのモッキー処女作は、しっかり見通せた自信はなく、言われる程感動·ショックはなかった。容姿も積極性も経験·手管も女性への真摯さも、まるで違うタイプの偶然コンビとなる2人の、一夜のナンパ作戦と成果の模様。しかし、それにばかりハマッてる訳でもないので、金·暇対策のへは諭し、ずっと抱いてた理想像まんまには向こうの事情第一に、少女も大切に、はしゃぐスウェーデン女2人組からは逃げ出したり、自らの責もあるのから退廃社交界の連れ出し依頼はすげなく(間違って入って弄ばれそうは救い出し、更にも·のケースも)、と(メイン二枚目の方は)成功せず続きは半ば自らから、それより何より男2人の間のもの·そしてより広い世界への認識·覚悟が深まって、軽さ·チグハグ可笑しさだけではなくなってくる。
終盤は『ゲームの規則』か『甘い生活』を少し想起の、はまった享楽上流社会から抜け出せるか、みたいな流れも伺えるが、全体にしっかり解決しない内に次の流れへというこの作家の基本筆致は、こういった決められ与えられた枠内のくっきり展開ものには向いてない気がする。しかし、車·路地や階段·扉らの絡む人の(画面への)出入りの半ば果てない繰返しによる情況ニュアンス変移の美·妙や、切返し等で会話·格闘のきっちり·しっくり捉えの味わい、それらのもたらすアタフタ·余裕見せの人間味は捨てたものでもない。この浅めの対人スタンス故の喪失感(それとの対照者も)を描いてるだろうが(内実はNVというより、アントニオーニ?)、当方がこの時間、身体疲労のピークに来ていた事で感得はできてない。
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が、ちと採点できない位に凄いのがこの数日前に見た『赤いトキ』。映画として、最高のテクニック·テイストを持ちながら、社会通念·常識や映画としての了解·阿吽をまるで意に介せず、独自の作家世界の外界と軋轢のないところで、ぐんぐん進めていって、鮮やかすぎるのか翔んでるのか、観てる側は半ば自分の意識を置いてかれ、勧善懲悪も納得ヒューマニズム·或いはワルぶりも何もなく、あまりの独特な流れに呆気にとられ、それが正体CUや傾け図の力と密度ある切返し、回る·フォロー·前後へ·迷う左右への見事でフリーなカメラワーク、こだわり小道具やラストまで放送でしか表れない警視とかの不安な密度、ヒョイヒョイ·リリカルな音楽性·ムードの流れっぱなしの心地よさで中和され·無判断めになってくるが、宝石とその代金の行方·活かし方がうろうろするうちに·また覚醒し、観た事のない流れを平気で示し来てる作と気づく。
シュトロハイムみたいに顎をコルセットで固めたヤクザに、博打借金を迫られるヴィンテージ酒セールスマンは遂には離婚前の奥さんに迄せがみ·また彼女浮気と誤認し·偶然突き止めた話題の絞殺魔本人に依頼の形に。友達と美容院開設の為に宝石を売ろうとしてるその妻は「愛なくもいい友のままの·役立たず」の夫にも肩入れし出す。彼女は勤めてるレストランオーナーに宝石現金化依頼してるが·オーナーはそれを更にヤクザに売って大金化し·ホラ吹き爺から海辺の自宅を買おうとしてるも·騙され踊らされこけにされっぱなし。少年期のトラウマでSEX抜きの絞殺魔になって10人近く殺した男は色々ボロ出すも·依頼を間違えそのオーナー殺しまで行き着く。ホラ吹きで終わりたくなく·絞殺魔として社会に認められたくアピール続いてた爺が、留置所イザコザでセールスマンをあっさり殺し、その容疑に気を良くし、オーナー殺し疑惑迄否定もせず·我がものに。何の疑いもないまま、すり抜けの絞殺魔の男は世が間違って一応落ち着くと、故セールスマンの妻の開店美容院で首回りのマッサージの受身快感を知り、寡婦となった彼女と結婚·不能ばかりみたいな主要人物らの中彼女と子もなす。ヤクザの子分とサツは同じ領域で張り合う。なんという、ドス黒さを突き抜けたトンデモ·内容、過剰なそれが麻痺して考えられない括りに。『言い知れぬ~』に匹敵するような快作=怪作。アブノーマル面を強調もせず、ただ独自倫理で進む鮮やかさ。
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