ちろる

秋立ちぬのちろるのレビュー・感想・評価

秋立ちぬ(1960年製作の映画)
3.9
大人は判ってくれないし、子どもは無力。
思いっきり遊べるはずの夏休みに、慣れ親しんだ田舎を離れ母に連れられて始まった東京の生活。
「だべ」「じゃん」の田舎言葉を東京の悪ガキにバカにされて居場所がなくなって、住み込みの女中で離れ離れになった母親にも甘えられない。
子どものため、子どものため。
そう願う母の願いに嘘はないと思うけど、まだ女盛りの母も、息子と離れて暮らすことによってちょっとしたスキができてしまう。
そんな女と母を行き来する不安定な女性役に乙羽信子はとてもよく似合う。
殆ど描かれるのは「ちいさな恋のメロディ」並みの少年、少女の可愛らしい子どもの世界なのだけど、2人がそれぞれバックにこの時間らしい悲劇を抱えていて遣る瀬無い。
女の容赦ない人生を突きつける事が多い成瀬監督ですが、子どもにも容赦なかった。
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