とらキチ

アナザー・カントリーのとらキチのレビュー・感想・評価

アナザー・カントリー(1983年製作の映画)
3.5
「12ヶ月のシネマリレー」にて鑑賞。
1930年代イギリスのパブリックスクールを舞台に同性愛や共産主義にのめり込んでいく学生たち。
大英帝国は植民地支配のため、現地のエリートと言われる人々を自分たちの支配体制側に取りこんで現地のシステムをうまく生かしながら統治し、その上にイギリス本国から最高権限者の超エリート官僚らを総督として派遣して支配するという間接統治をとっていた。例えば当時3億人の人口のインドを支配するためにイギリスから派遣されていたのは僅か1300人。なので彼らには相当な行政能力、政治力そして何よりも胆力が要求された。そんな彼らを養成していく上でのベースとなったのが、今作の舞台となった全寮制のパブリックスクール。そのような性格を持つ閉鎖的なエリート養成組織であるため、内部で形成される派閥&権力争いや上級生と下級生との間の絶対的な主従関係、寮対抗クリケットや軍事教練、さらには当時の一部インテリ層には魅力的に映ったであろう共産主義や同性愛者に対しての、偏見や迫害といった保守的校風が深く映し出される。
そして今作ではそんな窮屈な世界において、それぞれに愛や思想を貫き通そうとするも、大いなる挫折を味わうに至ってしまうままならない青春を描いている。
今作のあらすじを読むと、“耽美的”にという言葉が使われていて、実際鑑賞していると、画の雰囲気から劇伴から本当にムード満点で“耽美的”という言葉がしっくりくるなぁ…と思ってしまう。若かりしピチピチのコリン・ファース。若くても喋り方やセリフまわしは現在と一緒で、当時からそのスキルが完成されていた事がよくわかる。
同性愛についてはもっとセンセーショナルに描かれているのかと思っていたが、予想以上にプラトニックな関係。でも同性愛者への排除意識、差別や偏見への思いを吐露する場面にはグッときた。
主人公ガイ・ベネットは、実在のスパイだったガイ・バージェスをモデルにしていて、そうして共産主義にカブれた彼は後に進学したケンブリッジ大学でソ連にリクルートされ、1950年代まで機能したスパイ網“ケンブリッジ・ファイヴ”を築き、発覚後にはソ連に亡命することになる。
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