Keigo

紐育の波止場のKeigoのレビュー・感想・評価

紐育の波止場(1928年製作の映画)
3.5
なんだろうこの感じ。
決して奇を衒った作品ではないんだけど、どこか独特な味わいのある作品。

撮影が良いと感じる瞬間が多かった。
汗と煤まみれの火夫たちの作業場の熱、霧が立ち込める幻想的な夜の港、決して品がいいとは言えない半ば自暴自棄になった人々の欲望うごめく騒がしい酒場、そういった場所の空気感(温度や湿度のようなより身体的な感覚も含めて)や、サイレント映画でありながら実際にそこで聞こえるであろう様々な音が伝わってくるような映像だった。

あとはメイ役の女優ベティ・カンプソンの、あの絶妙にスレた感じが良かったなー。すごく綺麗な女優さんだけど、時折見せる寂しげな表情とか目線にやさぐれた色気があって。

思いっきり感情移入してしまうような話しではないけど、孤独で不器用な男と女の刹那的な駆け引きと愛の芽生えが、台詞ではなく映像によって上手く表現されていたと思う。
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