あかぬ

フォロウィング 25周年/HDレストア版のあかぬのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

自称作家の無職の男ビルは創作のヒントを得るためという名目で見知らぬ人を尾行するという行為を日々繰り返していた。対象の素性が知れた時点で尾行は終了するというルールを自ら設けていたが、ある日コッブという謎の男に尾行が勘付かれてしまう。しかし奇妙なことに彼もまた他人の家に不法侵入して人の私生活を覗き見る行為に取り憑かれた人物だったのだ。ビルはそんなコッブに次第に感化されていき、コッブと共に空き巣を繰り返すようになるが、ビルは気付かぬ間に思いもよらない事態に巻き込まれてしまっていて……というお話。

モノクロの画面や、テクノチックな劇伴は『π』を彷彿とさせる。公開した年は今作と同じ90年代で、どうやら当時はそういうのが流行ってたらしい。
時間を弄し、いくつもの時系列を交錯させるというアイデアはこの頃から健在で、こういう映像の奇妙さには当時も今も変わらず新しさを感じるし、ノーラン監督にしか表現できないものだと思うから凄いと思う。
とまぁ、構成と演出が素晴らしいのはもちろんそうなんだけども、キャラクター描写の粗雑さが少し気になるところではあった。謎の男コッブは、経歴や人間性、空き巣を繰り返す明確な目的も謎などころか名前すら最後まで明かされないという極端に省略された設定しか持っておらず、ラストではパズルの最後のピースがまだ見つからないようなモヤモヤが残る。そういう、謎を謎のままで終わらせるってのが良さなのかもしれないが。
その他のキャラクターも、妖艶な女とそいつに振り回される残念な主人公、とか、残虐なマフィア、みたいな典型的なキャラクターしか登場しなくてあまり新鮮味はない。
ノーラン節炸裂の時間軸混ぜこぜ構成だから複雑なお話に見えるけれど、今作の大筋は実はめちゃくちゃ単純な話で、もしノーランではなく他の誰かが全く同じストーリーをふつうの順序通りに描いていたら、ただのよくわからん映画になっていた気がする。

僅か6000ドルの低予算で作られたようには思えないくらいのクオリティで、その上これがデビュー作とはさすがとしか言いようがなくて…シンプルに感心したな。
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