磯野マグロ

『越後奥三面―山に生かされた日々』デジタルリマスター版の磯野マグロのレビュー・感想・評価

4.3
【幸せな村】55

4年もかけて、狩りとか釣りとか一緒にあちこち連れて行ってもらって(這いずりながら熊の穴に入っていく村人を見て、マジかよリアルゴールデンカムイ!と思いましたw〕、祭りも収穫もあれもこれもみんな見せてもらった製作陣。しかし最後に区長から「文化を残すっていうのは、親から子に継ぐことだと思う」、つまり、君たちが貴重な資料として消えゆく奥三面の文化を残そうが残すまいが、いまダム開発で村を失おうとしている俺たちの思いはそこにはない、とバシッと言われる。もちろん製作陣も、ここまで映画を見てきた観客も、区長の気持ちはよくよくわかっている。
でも、それから40年経った今なら、区長はきっと目を細めながらこの映画を見てくれるのではないか。日本中に無数にあった「奥三面」の多くが無住となり、なんの記録もないまま記憶の奥底に沈みまったく顧みられることもなくなったいま、こうやってありし日の笑顔が見られるだけでも、ここは幸せな村だと言えるのかもしれない。
もちろん、映像として残されている山の生活文化の豊かなことといったら!見るものを幸せにせずにはおかない。
磯野マグロ

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