グシケン

死刑台のメロディ 4K リマスター・英語版のグシケンのレビュー・感想・評価

4.0
本作は、単なる冤罪事件としてではなく、最初から裁判自体が判決に至るまで社会主義者・アナーキストらに対する見せしめとなるよう仕組まれていたこと、公平中立であるべき司法判断が政治的意向により歪められたことに対して強烈に問題意識を向けている。
検察から発せられる耳を疑う人権侵害の言葉や平然と行われる偽証の強要や証拠隠滅まで生々しく描かれる。
本作の白眉は、判決に対する被告人の意見申述のシーンだと思うが、アナーキストらしく最後まで抵抗し、誤った正義を非難した者と腐敗した司法制度に失望し、抵抗することも諦めた者との対照性が印象的だった。
本作というか、この事件のように、腐敗した司法制度への糾弾やアナーキストの主義主張の正当化のために彼らを尊い犠牲のように捉える結末はあまり好きではないが、間違いなく司法の汚点として語り継がれなければならない話であり、その意味で本作は貴重な作品であると思う。
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