回想シーンでご飯3杯いける

アインシュタインと原爆の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アインシュタインと原爆(2024年製作の映画)
3.5
原子爆弾の開発者を描いた「オッペンハイマー」の日本公開を目前に控えたこの段階で、その途上で関与したもう一人の人物アルベルト・アインシュタインの半生を描いたドキュメンタリーがNetflixで制作された。

ドキュメンタリーと言ってもアインシュタインが物理学者として活動していた時期は、まだ映像技術が十分に発達していなかった為、素材が十分に揃わないのだろう。本作では俳優による再現映像を挿入し、台詞は全て本人の発言から引用するという、凝った作りになっている。

ドイツ出身のユダヤ人である彼は、第一次世界大戦前後に相対性理論を発表し、物理・エネルギーの分野で大きな業績を残した他、平和運動にも積極的に関与していた。しかし、ナチスによるユダヤ人迫害を受けて、アメリカに移住する事になる。

本作を観て改めて思うのだが、物理の専門知識に対して僕達一般人の理解が全く追い付かない事。例えば原子爆弾の開発に於いて、アインシュタインはどう関わり、オッペンハイマーは何を成し遂げたのか? それをうまく説明する事が出来ない。

端的に言えば、アインシュタインは物理に於ける発見が軍事利用される事に最大限の危機感を抱いていたという事だ。しかし、世界大戦下の情勢変化によって、彼の理想は歪んだ形で受け入れられ、軍事利用を推し進める方向に傾いてしまう。

ナチス時代の排他的なドイツが、どこか今の日本に似ていてゾッとした。その流れの中で、当時ドイツの同盟国であった日本の様子も映し出される。アインシュタインの事だけではなく、政治と学問の関係を学ぶドキュメンタリーとしても観るべき点が多い。