コマミー

フジヤマコットントンのコマミーのレビュー・感想・評価

フジヤマコットントン(2023年製作の映画)
4.5
【仕事ってなぁに?】




「ひいくんのあるく町」「東京自転車節」の"青柳拓"監督が、山梨県中巨摩郡辺りにある障害福祉サービス「みらいファーム」を舞台に、そこで働く人々を優しく映したドキュメンタリーだ。監督の前作「東京自転車節」がかなり激しい衝撃作であったが、本作は打って変わってタイトルにある"コットン"の様に優しさと笑顔が滲み出たドキュメンタリーとなっていた。

まず「みらいファーム」で働く"障害者の方々"全員が皆"生き生き"としていて、こっちまで自然と笑顔になった。その人その人の"ありのままを大事にする"「みらいファーム」の概念があるからこそ、実現できた事だと思うし、監督もそんな人達の"ありのままをそのまま映した"からこそ、とてつもなく幸せなドキュメンタリーが誕生した。
皆とても印象的だった人ばかりだったのだが、中でも"おおもりくん"と"たつなりさん"が印象的だった。皆さんも多分そうであろう。
おおもりくんは、"とある事情"で他人と接する事を避けてしまった青年で、本作の"メイン的な扱い"で紹介されていた。そんな彼は私としては、「みらいファーム」のありのままを大事にする精神の賜物とも言える成長を見せた子なのではと思うのだ。おおもりくんを映す事によって、「みらいファーム」の精神の魅力を伝えられたと思うし、何よりおおもりくんの体力には驚かされた(みらいファームから寄り道先のイオンモールまで26分も歩いて行くなんて普通に凄い)。
そして"カメラが得意"で、ベテランの"けんちゃん"と良いコンビのたつなりさん。たつなりさんはベテランのけんちゃんと一緒に花の栽培担当をしていて、写真を撮るのが大好きな青年だ。そしてとても"チャレンジ精神"に満ちていて、普通に彼の行動力や仕草には感銘させられた。そして何よりも1番感動させられた彼の一面は、彼の"仕事に対する考え方"。ラストでたつなりさんは、青柳監督に「仕事ってなぁに?」と質問するのだが、青柳監督がそれなりに答えた後に、たつなりさんは「人が幸せになる為にする事」と答えた。
…もう考え方が私達とは違すぎて感心させられた。尊敬に値する。本当にたつなりさんの言葉には、心を打ち抜かれてしまった。

「障害者」に対する価値観は人それぞれだ。その人を好きになるのも毛嫌いするのも自由かもしれない。
ただ一つ言える事は、ハンデをもろともしないこの人たちは、上を見続けており、"侮ってはいけない存在"だという事だ。このドキュメンタリーを見て、障害者に対する価値観が変わって欲しいと思うし、「みらいファーム」で働く人々にはこれからもありのままの人生を、そしてそれを見守る団体の方々には、その精神をこれからも大事にしてもらいたいなと感じた。

そして、たつなりさんが唱えた、「仕事に対する考え方」を見て、少しでもポジティブになれる人が増えたら良いなと心から感じた。
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