回想シーンでご飯3杯いける

ストップ・メイキング・センス 4Kレストアの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

4.5
バンドの経歴を説明するテロップも、インタビューも、ましてや難病やメンバー間の確執といったドラマ要素も一切無し。そこにあるのは音楽。

撮影日の会場でお客さんが見ていないものは一切映らないし、逆に、お客さんが見ていた物は、全てこのフィルムの中に収められているのではないだろうか。音楽映画の在り方の、ひとつの究極形を、ここまで徹底した作品は他に無いと思う。

メンバーの内3人が美術大学の出身で、アートとロックの融合に自覚的だった事も大きい。曲を作る段階から、肉体や映像を使った表現を前提にしていた事が伝わってくる。

トーキングヘッズが活動していたのは、ちょうどクイーンと同じ時期に当たる。トーキングヘッズの音楽がパンクやニューウェイヴのマニアックな系統なので勘違いされそうだけど、当時の知名度やセールスに於いて両者は対等であったと思う。文化的な影響力や、後世のミュージシャンに与えた影響という点では、トーキングヘッズの方が強い存在感を放っていたかもしれない。

独創的でアートとしてのアプローチを続けながら、ポップスとしての人気も併せ持つ。当時の音楽業界に於けるポジションは、現在の映画業界に於けるA24と非常に似ている。そんな彼らの映像がA24による4Kレストアで公開されたのは、何ともしっくりくる話である。