いち麦

あまろっくのいち麦のレビュー・感想・評価

あまろっく(2024年製作の映画)
5.0
江口のりこが演じる主人公・優子は、よくある“痛い”中年女性のイメージとはまたちょっと違った、頗る頭が良くて優秀である一方、効率優先で愛想がない故に周囲から疎まれるキャラクター。どう見られようが周りの目を全く気にせずに素の自分を曝け出しているサッパリ感が逆に魅力的にさえ見えてくる。
テーマにも通じタイトルになっている尼崎閘門の紹介から入り、話の展開上で過不足のない描写で人間関係の変容と心の成長を描いた、笑って泣けるイイ人間ドラマだったので大満足。

この映画、実は抜群の存在感と演技力を持つ江口のりこ主演ということだけで鑑賞することを決め、かなり前から期待していた。もう当て書きされたのではないかと思うくらい主人公の優子を引き寄せ完全に自分のものにした自然体演技が素晴らしい。父親(笑福亭鶴瓶)、20歳の継母(中条あやみ)、婚約者(中林大樹)らの良い演技さえも江口のりこが引き出し、彼らの役処に纏わりついていた“ちょっとあり得ないんじゃない?”感を全て払拭しきっていた。
年代の違う登場人物にきちんと別の俳優を当て、メイクだけで誤魔化さないキャスティングも大いに好感。高畑淳子に大笑いした。これはお気に入り作品に。
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